独立して2年目の1月、都税事務所から封筒が届きます。中身は「固定資産税(償却資産)申告書」。

土地も建物も持っていない。だから関係ない、と思う。ここで捨てる人がいます。

**固定資産税には、土地・家屋のほかに「償却資産」という第三の顔があります。**事業のために使っている機械や備品が対象です。持ち家でなくても、賃貸のワンルームで仕事をしていても、対象になりうる。

償却資産とは何か

地方税法341条4号は、償却資産をこう定義しています。土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償却額または減価償却費が法人税法または所得税法の規定による所得の計算上、損金または必要経費に算入されるもの——ただし取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産を除く。

長いですが、要点は3つです。

  • 土地・家屋ではない
  • 事業に使える状態にある
  • 所得の計算上、減価償却の対象になっている

東京都主税局が示す例示は、看板、外構工事、機械及び装置、パソコン、陳列ケース、ルームエアコン、応接セット、LAN設備など。テナントとして借りた部屋に自分で入れた内装・造作も、借りた側が申告する側になります。

申告義務は、税額とは別に存在する

ここを最初に押さえてください。

賦課期日である1月1日現在に償却資産を所有している人は、その年の1月31日までに、資産が所在する区市町村へ申告します。根拠は地方税法383条です。

東京23区なら、資産の所在する区にある都税事務所の償却資産班へ。法人事業税の所管区域とは別で、複数の区に資産があるなら区ごとに1通ずつ出します。

期限が土日にあたれば翌開庁日にずれます。令和8年度は1月31日が土曜日だったため、東京都の手引きでは提出期限が**令和8年2月2日(月)**でした。

そして、いちばん見落とされるのがここです。

※ 償却資産を所有されていない方は「該当資産なし」として申告をお願いします。なお、「該当資産なし」で既に申告している方で増加資産がない場合は、翌年度以降の申告は不要です。

**ゼロでも一度は出す。**出しておけば、資産が増えない限り翌年からは不要になります。逆に、出さずに放置すると毎年封筒が届き続けることになる。

罰則の規定もあります。正当な理由がなく申告しなかった場合は地方税法386条および東京都都税条例137条により過料を科されることがあり、虚偽の申告をした場合は385条により懲役または罰金の対象になりうる、と手引きは明記しています。

本題:所得税で得した処理ほど、ここで残る

独立した個人にとっての急所は、この一点です。

少額減価償却資産の扱いは、所得税と償却資産税でずれています。地方税法341条4号と同法施行令49条により、次のものは申告対象から外れます。

所得税側の処理償却資産の申告
取得価額10万円未満を一時に損金算入(必要経費)対象外
取得価額20万円未満を3年間で一括償却対象外
20万円未満のリース資産(所有権移転外リース等)対象外
中小企業特例(30万円未満)を適用して損金算入対象
少額であっても個別に減価償却することを選択した資産対象

読み違えようのない非対称です。

30万円未満の特例を使って28万円のパソコンをその年に全額落とすと、所得税は軽くなる。**しかしその資産は、償却資産としては生き残ります。**一方、15万円のモニターを一括償却資産(3年均等)にすれば、所得税では3年に分かれる代わりに、償却資産の申告からは消える。

つまり「今年いくら経費にできるか」だけで選ぶと、翌年以降の申告と税額が動きます。節税と申告事務は、同じ方向を向いていません。

なお中小企業特例そのものにも期限があります。手引きの注記によれば、適用できるのは平成15年4月1日から令和8年3月31日までに取得した資産です(租税特別措置法28条の2、67条の5)。延長が繰り返されてきた制度なので、購入前に最新の状態を確認してください。

申告が要らないもの、意外と要るもの

対象にならないものは次のとおりです。

  • 自動車税(種別割)・軽自動車税(種別割)の課税対象となるべきもの(実際に課されている必要はない)
  • 無形固定資産(アプリケーションソフトウェア、特許権、実用新案権など)
  • 繰延資産(創立費、開業費、開発費など)

ソフトウェアが外れるのは大きい。**クラウドのサブスクリプションと会計ソフトで仕事が完結する人は、そもそも申告対象がほとんど積み上がりません。**私のように、パソコンとモニターと椅子くらいしか持たない働き方だと、そうなります。

逆に、こちらは対象に含まれます

  • 償却済資産(耐用年数が経過して帳簿価額が備忘価額まで下がったもの)
  • 建設仮勘定で経理されている資産のうち、完成して事業に使っている部分、および簿外資産
  • 遊休または未稼働の資産(1月1日現在、事業に使える状態にあれば対象)
  • 改良費(資本的支出。新たな資産の取得とみなして本体と区分)
  • 福利厚生の用に供するもの

**「もう償却が終わったから関係ない」は通りません。**評価額は取得価額の一定割合(備忘価額)まで下がって止まり、持っている限り申告の対象として残ります。

150万円の免税点──課税されないことと、申告しなくていいことは違う

税額はこう決まります。

各資産の評価額を区ごとに合算した額が決定価格となり、これが課税標準額(1,000円未満切り捨て)になります。そこに税率100分の1.4をかけ、100円未満を切り捨てたものが税額です。

そして、**課税標準額が150万円未満の場合は課税されません。**これが免税点です。

東京都の手引きにある計算例を借りると、舗装路面270万円・応接セット50万円・看板165.53万円を持つ事業者の令和8年度の評価額合計は3,398,644円。1,000円未満を切り捨てて3,398,000円に1.4%をかけ、47,572円→47,500円が税額になります。

独立して1人で動いているコンサルタントなら、150万円に届かないことのほうが多いはずです。パソコン2台、モニター、デスク、椅子——評価額は毎年下がっていくので、なおさら届きにくい。

**ただし、免税点は「課税されない」だけです。申告義務は別に立っています。**ここを混同して申告しないでいると、後から遡って課税されることがある。手引きにも過年度への遡及の項目が用意されています。

届く可能性が現実的にあるのは、次のような人です。

  • 事務所を借りて内装・造作を入れた(テナントが取り付けたものはテナントが申告)
  • 撮影・配信・制作の機材を積み上げている
  • 複数拠点に備品を置いている

正直に書きます

私はこの封筒を、独立した最初の年に一度、脇によけました。「償却資産」という言葉の意味が分からなかったからです。土地も家屋も持っていないのだから何かの間違いだろう、と。

間違いではありませんでした。**償却資産税は、資産を持っているかどうかで来る税金であって、儲かっているかどうかとは無関係です。**赤字でも、休んでいても、1月1日に事業用の資産を持っていれば申告の対象になる。住民税個人事業税が所得を追いかけてくるのとは、性質が違います。

やることは重くありません。**該当資産がなければ「該当資産なし」と書いて一度出す。**それで翌年以降は終わります。機材を買い足す人は、減価償却の処理を決める段階で「この資産は償却資産として残るか」を一緒に考える。それだけです。

いちばん高くつくのは、封筒を開けないことです。

まとめ

  • 固定資産税には土地・家屋のほかに償却資産があり、事業用の機械・器具・備品・内装造作などが対象(地方税法341条4号)。
  • 賦課期日は1月1日、提出期限は1月31日(同383条)。期限が土日なら翌開庁日で、令和8年度は2月2日(月)だった。東京23区は資産の所在する区の都税事務所へ、区ごとに1通。
  • **資産がなくても「該当資産なし」で一度申告する。**以後、増加資産がなければ翌年度以降は不要。正当な理由なく申告しないと過料の規定がある(同386条)。
  • **10万円未満で一時に損金算入したもの・20万円未満で3年一括償却したものは申告対象外。中小企業特例(30万円未満)で全額落とした資産は申告対象。**所得税の節税と償却資産の申告は同じ方向を向いていない。
  • ソフトウェアなどの無形固定資産と繰延資産は対象外。自動車税・軽自動車税の課税対象も対象外。
  • 償却済資産・遊休資産も対象。「使っていない」「償却が終わった」では外れない。
  • 税率は100分の1.4。課税標準額が150万円未満なら課税されないが、それは申告しなくてよいという意味ではない。

償却資産税の取扱いは自治体によって差があり、区分表も東京23区のものは23区の取扱いです。制度も改正で動きます。実際の判定は、資産の所在する自治体の案内と、税理士に確認してから決めてください。

参考:東京都主税局「令和8年度 固定資産税(償却資産)申告の手引き」(令和7年11月発行/令和7年9月末現在で作成)/東京都主税局「固定資産税(償却資産)」/地方税法(第341条、第383条、第385条、第386条)/地方税法施行令第49条/租税特別措置法第28条の2