「いい人がいたら紹介してよ。決まったらお礼するから」

独立していると、年に何度もこの会話をします。言うほうも言われるほうも悪気はない。ただ、この「決まったら」がどの時点を指すのかを決めていないまま進むと、あとで必ず気まずくなります。

紹介した知人が登録だけして音沙汰がなかった。面談まで行ったが案件が無かった。実際に稼働が始まったのは半年後だった。この3つは全部「紹介した」に含まれますが、お礼が発生する場面かどうかは全然違います。

私は自社で紹介の座組を設計したとき、この線引きを紙に落として比較しました。この記事はその中身です。

紹介の流れは、3つの段階に分かれる

まず、段階を分けます。紹介した人が最終的に仕事に就くまで、実際には次の3つを通ります。

① 登録 紹介された人が、自分の意思でプロフィールを出す段階。紹介した側の手はここで離れます。

② 初回面談 受け入れる側が本人と直接話す段階。経歴、稼働できる時期、そもそもやる気があるのか。ここを通らないと、紙の上の経歴しか分かりません。

③ 配置(稼働開始) 実際に発注先が決まり、仕事が始まる段階。ここで初めて売上が立ちます。

「紹介が成立した」という言葉は、この3つのどこにでも置けてしまいます。だから曖昧なままになる。先に置く場所を決める、というのがこの話の全部です。

どの段階に報酬を置くかで、4つのことが変わる

3案を並べて比較しました。変わるのは次の4点です。

A案:登録時に払う

  • 紹介は最も集まります。ハードルが低いから
  • ただし登録は売上ではありません。1件も仕事が決まらなくても費用だけ出ていく
  • 自作自演や名前だけの登録を誘発する。報酬狙いの余地が一番大きい
  • 現金が売上より先に出る

B案:初回面談を通った時点で払う

  • 面談を通っている分、A案より質は担保されます
  • ただし面談通過はまだ売上ではない。配置が決まる保証はない
  • 現金はやはり売上より先に出る

C案:配置が成立した時点で払う

  • 売上に連動します。1件あたりのコストが計算できる
  • 仕事が決まらなければ1円も出ないので、数合わせの紹介に旨みが無い
  • 現金は売上が確定してから出せる
  • そのぶん、紹介する側は慎重になる。数は減ります

私はC案を選びました。理由は「数が欲しいのではなく、決まる紹介が欲しいから」です。 A案は紹介の件数だけが積み上がって、売上に一度も届かないという状態を作りやすい。数が出ている分だけ、うまくいっているように見えるのが厄介なところです。

決まりやすさを落とさずに質を守る、3つの仕掛け

C案の弱点は、紹介の数が減ることです。そこを別の3枚で補いました。

1. 報酬は成果に紐づける 上のC案そのものです。登録や面談だけでは報酬が出ない設計にしておくと、「とりあえず名前だけ出す」紹介が自然に消えます。

2. 紹介経由でも、面談は全員通す 紹介された人だから信用できる、とはしない。既存の登録者と同じ初回面談を全員に適用します。紹介した人の顔を立てて面談を省くと、その人の信用ごと巻き込んで崩れます。 面談で何を聞くかは初回面談で必ず確認する7項目に書きました。

3. 自己紹介と二重紹介を、台帳で機械的に弾く 紹介した人と紹介された人が同一人物でないか。既に別ルートで接触していた人が「新規の紹介」として出てきていないか。この判定を人の記憶に任せると必ず漏れます。 台帳の列で自動判定にしました。先に接触していた場合は対象外、というルールも先に書いておきます。

金銭以外の形も併用できます。良い依頼を先に相談する、条件を一定期間優遇する、といった非金銭の返し方です。現金が出ていかない分、始めやすい。

許可が要るかどうかは、断定しない

ここは正直に書きます。

人を紹介して金銭を受け取る行為は、職業安定法の論点に触れる可能性があります。 有料職業紹介事業の許可が必要になるのはどこからか、第三者に報酬を払って人を集めてもらう形をどう評価するか。このあたりは、配置の中身が雇用に及ぶのか業務委託にとどまるのかによっても評価が変わり得ます。

私はこれを自分の解釈で確定させませんでした。 設計書には「許可の要否は要確認」と書いたまま止めてあり、金銭の支払いを外に告知するのは専門家に確認してからにする、という順番にしています。

独立コンサルとして「知り合いを紹介してお礼をもらう」という話が出てきたときも、同じ線で考えるのが安全だと思っています。善意でやったことが許認可の話になっている、という状態を後から知るのがいちばん困る。 判断が要る場面では、所轄の労働局や専門家に先に当たってください。

なお、個人情報の扱いも同じです。紹介された人の経歴は本人の同意の範囲でしか使えません。紹介する側が良かれと思って経歴書を先に送る、というのが一番危ない。

実績の件数は、ここでは出しません

この座組で何件決まったか、という数字はここには書きません。公開していないからです。

数字を出さない記事は弱く見えるかもしれませんが、設計の途中段階で「これだけ実績があります」と書くのは、それこそ紹介してくれる人への裏切りになります。 出せるようになったら出します。

紹介する側が、先に確認しておくといい3つ

最後に、紹介を頼まれる側の立場でまとめます。

  1. 「決まったら」がどの段階か聞く。 登録なのか、面談なのか、稼働開始なのか。ここを聞くだけで、相手の本気度もだいたい分かります。
  2. 知人の情報を、本人の許可なく先に渡さない。 名前を出す前に本人に一言。これだけで後の事故がほとんど無くなります。
  3. お金の話が出たら、形と根拠を確認する。 金銭なのか、条件の優遇なのか。金銭なら、支払う側が許可の要否をどう整理しているかを聞く。曖昧な答えしか返ってこないなら、その場は非金銭の形にしておくほうが安全です。

紹介は、独立してからいちばん効く導線です。広告よりも、知らない相手への打診よりも、決まる確率が高い。

だからこそ、成立の定義を最初に決めておく価値があります。曖昧なまま回した紹介は、決まったときにいちばん気まずくなる。 決まって嬉しいはずの場面で気まずくなるのが、この話のいちばんもったいないところです。

独立まわりの相談はLINEでも受け付けています

※本記事は自社で作成した設計文書をもとに、判断の考え方を整理したものです。許認可の要否は個別の事情によって結論が変わります。実際に金銭のやり取りを始める前に、必ず所轄の窓口や専門家にご確認ください。