独立の相談を受けるとき、私たちは1枚のシートを使っています。60分の面談中に埋めていく実物です。
埋める欄は7つ。この記事では、その7つをそのまま開きます。中身を隠したまま「相談してください」と言うより、先に見せたほうが早いと思ったからです。ひとりで埋めることもできる作りなので、まだ誰にも相談していない人が自分で使ってもらってもかまいません。
先に断っておきます。**この場で単価や条件を約束することはありません。**希望を聴いて記録するところまでが面談で、金額の提示は案件ごとの話になります。判定に使っている社内の基準そのものも、ここでは出しません。この記事は「何を聞くか」に絞ります。
なぜ7つで、なぜこの順番なのか
聞く順番には理由があります。事実 → 現在地 → できること → 望むこと → 動機 → こちらの見立て → 次にやること。
動機から先に聞くと、話が「独立したい理由」で60分終わります。気持ちは大事ですが、気持ちだけでは次の一歩が決まりません。**先に動かせない事実(いつから空くか、何ができるか)を固めてから、望むことを聞く。**この順番にしてから、面談の終わりに「で、次は何をすればいいですか」が必ず答えられるようになりました。
1|基本情報
年代、いまお住まいの地域、現在の雇用形態、連絡の取りやすい手段。
ここは事務的に見えて、実は居住地と連絡手段が後で効きます。案件はリモート中心を基本にしていますが、月に何度か集まる形はあります。移動が現実的かどうかは、地域で変わる。連絡手段は、返事が返ってくる経路をひとつ確定させておくためです。
2|現職・稼働状況
いまの会社と役割、社会人としての年数と専門領域での年数、いつから動けるか、そしていまどれくらい空くか。
正直に言うと、この2番目でその後の話の8割が決まります。「独立したい」と言う人のうち、いつから動けるかを答えられる人は多くありません。退職の申し出をしていない、引継ぎの見通しが立っていない、有給の残りを数えていない。ここが空欄のままだと、どんなに良い話も具体化しません。
副業として先に始められるかも、ここで聞きます。辞めてから探すより、辞める前に1本動かすほうが安全だからです。タイミングそのものの考え方は独立のタイミングに書きました。
3|スキル・専門領域
主な専門領域を挙げてもらい、項目ごとに1〜5で自己申告してもらいます。使っている目安はこれです。
- 1|知識としては知っている
- 2|補助として関わったことがある
- 3|独力で担当したことがある
- 4|リードした経験がある
- 5|第一人者として、人に教えられる
そして必ず、**その数字の根拠になる具体的な案件をひとつ聞きます。**ここが山場です。
面談で何度も起きるのが、**「4のつもりだったが、話してみると3だった」**という場面です。悪いことではありません。会社の中では役割の名前で仕事が呼ばれるので、実際に自分が決めたのかどうかが曖昧なまま何年も過ぎます。エピソードを1つ話してもらうと、そこが必ず見えます。
逆に、3と申告した人が実は4だったということも同じくらい起きます。謙虚な人ほど自分の経験を低く見積もる。だから自己申告だけでは使わず、必ず具体で裏を取ります。書き方の型はスキルシートの書き方にまとめています。
4|希望する働き方と条件
希望する働き方、収入のイメージ、週に何日動けるか、そしてNG条件。
NG条件は必ず聞きます。地域、常駐の可否、稼働できない時間帯。**「何でもやります」と言う人ほど、後で条件が合わずに止まります。**先に言いにくいことを言ってもらうほうが、結局は早い。
繰り返しますが、**この欄は聴くだけで、金額を約束する場ではありません。**希望を記録して、案件が出てきたときに照らします。相場の感覚を先に持っておきたい方はコンサルの単価相場を読んでおいてください。
5|志向(独立・副業・転職)
独立への気持ちの強さ、独立を考えた背景ときっかけ、そして独立への不安を、本人の言葉のまま。
ここは言い換えずに、そのまま書き取ります。「収入が不安」と要約してしまうと、後で読み返したときに何も残らないからです。「子どもが小学校に上がるまでに形にしたい」「上司が代わって、あと5年ここにいる自分が想像できなくなった」。この粒度で残しておくと、次に会ったときの話が続きます。
不安そのものについては独立の孤独と壁打ちにも書きました。
6|リスク・懸念(これだけは、聞く欄ではない)
正直に書きます。**7つのうち6番目だけは、本人に質問する欄ではありません。**面談したこちら側が、見立てを書く欄です。
書くのは、総合的な見立て(すぐ提案できる/整理が要る/今回は見送り寄り)と、その理由になった懸念、そしてあとで裏を取る必要がある未確定事項です。
なぜこれを記事に書くかというと、面談には必ず相手側の評価があるという事実を伏せたくないからです。伏せると「話を聞いてもらえた」で終わり、実際には何も進んでいない、ということが起きます。見立ての区分ごとの社内基準は出しませんが、評価する欄があるということは書いておきます。
7|次アクションと、面談者の所感
最後に、次に何を、いつまでにやるかを書きます。
- 経歴書のテンプレートを送る/◯月◯日まで
- 稼働開始の見込みを、社内で確認して連絡する/◯月◯日まで
- スキルの3番目について、案件名を1つ思い出して送る/今週中
**期限のない次アクションは、実行されません。**これは例外がほとんどありませんでした。だから面談の最後の5分は、必ず期限を入れる時間に使います。
登録してから最初の案件までの流れそのものは登録から最初の案件までに書いています。
答えられなかった欄が、そのまま準備の残り
7つ埋めてみると、たいてい何か所か空欄が残ります。私の実感では、**空欄が出やすいのは2番(いつから動けるか)と3番(スキルの根拠になる案件)**です。
そして、この空欄こそが独立準備の残りそのものです。
- 2番が埋まらない → 決めるべきは独立の可否ではなく、辞める段取り
- 3番が埋まらない → 足りないのは経験ではなく、経験の書き方であることが多い
- 4番が埋まらない → 相場を知らないだけ。ここは調べれば埋まります
- 5番が埋まらない → 独立が目的ではなく、いまの職場から離れたいのかもしれない
最後のケースは、それ自体が悪いことではありません。ただ、独立で解決する問題なのかどうかは、先に切り分けたほうがいい。準備の全体像はコンサル独立の準備にまとめています。
ひとりで埋めるなら
相談しないで自分でやる場合の手順です。
- **2番から書く。**いつから動けるか、いま何割空くか。ここが一番大事なので最初に書きます
- **3番の各項目に、案件名をひとつ添える。**添えられない項目の数字は、いったん1つ下げてみてください
- **5番を、要約せずに書く。**きれいな言葉にしないこと
- **空欄に印をつけて、それぞれに期限を入れる。**印の数ではなく、期限の有無を見ます
初回の60分でやっているのは、説得でも査定でもありません。いま立っている場所を、本人と一緒に確定させる作業です。
場所が決まれば、次の一歩は自然に決まります。逆に、場所が曖昧なまま気合いだけで踏み出すと、半年後に同じ問いに戻ってきます。
自分の現在地だけでも先に確かめたい方は、30秒の独立準備度チェックから入ってみてください。登録は要りません。