8月に入ると、この相談が増えます。「消費税の納付書が届いたんですが、これ何ですか。3月に払ったばかりですよね」。
消費税の中間納付です。今年分の消費税の前払いで、個人事業者の年1回の場合、納期限は8月31日。3月に済ませたのは前年分の確定申告なので、別物です。
誰に届くのか
対象は前年の確定消費税額(国税分)が48万円を超えた人です。地方消費税を除いた国税部分だけで判定します。
インボイスを機に課税事業者になった人が、2年目、3年目でここに引っかかり始めています。売上規模でいえば、おおむね1,000万円台の後半から2,000万円あたりで届きはじめる感覚です。
該当しない人には来ません。届いていないなら、48万円のラインを超えていないということです。消費税を納める義務そのものの判定はフリーランスの消費税に書きました。
回数と期限は、前年の税額で3段階
| 前年の確定消費税額(国税分) | 中間申告の回数 | 中間納付額 |
|---|---|---|
| 48万円以下 | 原則なし(任意制度あり) | — |
| 48万円超〜400万円以下 | 年1回 | 前年の6/12 |
| 400万円超〜4,800万円以下 | 年3回 | 各回 前年の3/12 |
| 4,800万円超 | 年11回 | 各回 前年の1/12 |
期限は共通で、各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2か月以内です。
年1回の人なら、対象期間は1月1日から6月30日。その末日の翌日から2か月以内なので、8月31日になります。
ひとつ例外があります。年11回の個人事業者は、1月から3月分の期限が5月末日です。4月分以降は原則どおり、対象期間の末日の翌日から2か月以内。ここだけ後ろにずれています。
なお、納める額には対応する地方消費税も付きます。消費税額の78分の22です。納付書に印字された金額はこれを含んだ合計なので、通知どおりに払えば足ります。
金額は自分で計算しなくていい
ここは安心してください。年1回の人には、税務署から中間申告書と納付書が送られてきます。金額もすでに印字されています。前年の確定消費税額を12で割って6を掛けた額です。
つまり、何もしなければ「届いた納付書のとおりに8月31日までに払う」で完結します。これを予定申告方式といいます。
売上が落ちた年は、仮決算で止められる
問題は、この金額が前年の実績で決まることです。
今年になって案件が減った。単価交渉に失敗した。大口が1社抜けた。それでも前年ベースの額を先に払わされる。これは資金繰りとして重いです。
このときに使えるのが仮決算による中間申告です。中間申告の対象期間(年1回なら1月1日〜6月30日)を、ひとつの課税期間とみなして、実際の売上と仕入れから消費税額を計算し直す。その額で申告できます。
半年間の実績が前年の半分なら、納める額もそれに応じて下がります。
ただし、割に合うかは別です。判断材料を3つ書きます。
- **半年分の決算を組む手間がかかる。**帳簿を6月末で締めて、確定申告と同じ作業を1回余分にやることになります。会計ソフトで日々入力できている人なら現実的ですが、年末にまとめて入力する運用の人には重い。
- **仮決算の結果がマイナスでも、還付は受けられません。**計算した結果が0円以下なら中間納付額は0円になりますが、還付にはなりません。
- **期限は同じ8月31日。**やると決めたら、7月中には手を付ける必要があります。
判断の順番はシンプルです。上半期の売上が前年同期の7割を切っているか。切っているなら仮決算を検討する価値があります。切っていないなら、届いた納付書どおりに払うほうが安いです。
逆に、48万円以下でも先払いに変えられる
前年の確定消費税額が48万円以下でも、**「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」**を税務署に出せば、年1回の中間申告ができます。
なぜわざわざ払いに行くのか。3月の一括払いが重いからです。
消費税は預かった性格のお金なので、本来は売上と一緒に入ってきています。ただ、口座に混ざったまま1年放置すると、3月に手元にない。年に1回でも半分先に納めておけば、3月の山が半分になります。
2割特例が令和8年分で終わり、令和9年分以降の負担が変わる人にとっては、資金繰りを平準化する手段のひとつとして検討する余地があります。
払わなかったらどうなるか
「中間申告書を出さなければ、納めなくていい」と考える人がいますが、逆です。
中間申告書を提出する義務がある人が提出しなかった場合、予定申告方式で申告があったものとみなされます。納税義務は消えません。そこに納期限が来て、払っていなければ延滞税が付きます。
放置しても何も止まらない。届いた納付書は、そういう性質のものです。
中間で納めた分は、3月に精算される
中間納付は前払いなので、翌年の確定申告で精算します。
- 年間の確定税額 > 中間納付額 → 差額を納付
- 年間の確定税額 < 中間納付額 → 差額が還付
売上が落ちた年に前年ベースで払いすぎていれば、翌年3月に戻ってきます。ただし戻るのは翌年です。**その間の資金は寝ます。**仮決算を検討する意味はここにあります。還付金が実際に入るまでの期間は確定申告の還付金に書きました。
課税方式が変わる年は、判定もずれる
もうひとつ。中間納付の要否は前年の確定消費税額で決まるので、課税方式を変えた年の翌年は、額が大きく動きます。
- 2割特例や簡易課税で前年の税額が小さかった → 翌年は中間が来ない、または額が小さい
- 特例が外れて本則課税に戻った → 翌々年から中間が立ち上がる
登録の取りやめを検討している人も、判定に使われるのは前年の実績だという点は同じです。今年の判断が、再来年の納付書に効いてきます。
まとめ
- 対象は前年の確定消費税額(国税分)48万円超。年1回の人の納期限は8月31日。
- 金額は税務署が計算して納付書で送ってくる。前年の6/12。何もしなければそのまま払う。
- 売上が落ちた年は仮決算による中間申告で下げられる。ただし手間がかかり、マイナスでも還付はない。目安は上半期が前年同期の7割を切るかどうか。
- 48万円以下でも、届出を出せば任意の中間申告ができる。3月の山を平準化する手。
- 出さなくても申告があったものとみなされる。放置すれば延滞税が付くだけ。
- 中間で納めた分は翌年の確定申告で精算。払いすぎは還付されるが、戻るのは翌年。
消費税は改正の多い領域です。自分の年の判定額と期限は、国税庁の案内と顧問の税理士で確認してから動いてください。