「SAPコンサルの単価は高い」とよく言われます。実際、他のITの職種と比べても月額の水準は高めで、独立を考える経理・情シス出身者にとっては大きな魅力です。ただ、その「高い」がどこから来ていて、自分が今どのゾーンにいるのかを分かっている人は多くありません。私はアビーム、アクセンチュアでSAPの経理領域に携わり、今も自社でSAP・経理改革の案件を見ています。この記事では、SAPコンサルの単価を、何で決まるのか・どう上げるのかを軸に分解します。相場は時期や景気、案件によって動くので、具体的な金額は目安として読んでください。
なぜSAPの単価は高いのか
まず、高さの根っこにあるのは「経理・会計の業務」と「システム」の両方が分かる人が、そもそも少ないという需給です。
SAP、とりわけFI(財務会計)やCO(管理会計)の領域は、単にシステムを触れるだけでは務まりません。決算の流れ、仕訳の意味、原価計算の考え方——業務そのものを理解していないと、要件を正しく設計に落とせない。この「業務×システム」の掛け算ができる人材が希少だから、単価が高く保たれています。逆に言えば、片方しかできない人はこのゾーンに入れず、単価も伸びにくい。ここがSAP単価の本質です。
単価を決める4つの軸
同じ「SAPコンサル」でも、月額には大きな幅があります。何がその差を生むのか。おおよそ次の4つで決まります。
第一に、モジュール。FI/COのような会計系、SD(販売)やMM(購買)といったロジ系、あるいはBASISやABAPのような基盤・開発系で、需給が違います。案件数の多い領域と、人が薄い領域とで単価は変わる。希少なアドオン領域や、新しい技術に寄った領域は高くつきやすい傾向があります。
第二に、工程。要件定義や構想策定といった上流に立てるか、設計・開発・テストといった下流を担うかで、単価は明確に変わります。上流ほど高く、下流ほど代替が効くぶん抑えられる。経理業務を語れる人が強いのは、この上流に食い込めるからです。
第三に、立場。プロジェクトをまとめるリード・PMなのか、一機能を担当するメンバーなのか。人を動かし進行に責任を持つ立場ほど、単価は上がります。
第四に、SAPのバージョンや案件の性質。S/4HANAへの移行案件のように、経験者が限られ需要が集中している領域は、単価が押し上げられます。古い環境の保守だけだと、そこまで伸びにくい。
月額の相場感——ゾーンで捉える
金額の一点を言い切るのは誤解を招くので、ゾーンで捉えてください。
下流のメンバークラス、担当機能を実装していく立場だと、月額はひとつのゾーン。設計から任され、業務要件を握れる中堅になると、そこから一段上がる。上流の構想やプロジェクトのリード、複数モジュールを俯瞰できる立場になると、さらに上のゾーンに入ります。同じ人でも、担う工程と立場が変われば月額は数十万円単位で動く。「SAPコンサルの単価」という一つの数字は存在せず、自分がどのゾーンで売っているかがすべてです。
大事なのは、単価は「スキルの絶対値」ではなく「その案件でどの役割を担うか」で決まるという点。同じ実力でも、下流で使われれば下流の単価、上流を任されれば上流の単価になります。
単価を上げる道筋——現実的な順番
では、どうやって自分のゾーンを上げるか。近道はありませんが、順番はあります。
ひとつめは、工程を上流に寄せること。実装だけでなく、要件定義や業務設計の場に食い込む。経理の実務が語れる人は、ここで圧倒的に有利です。「このシステムをどう作るか」ではなく「この会社の会計業務をどう回すか」を語れると、発注元はあなたを上流の人として扱い始めます。
ふたつめは、担当範囲を広げること。単機能の担当から、複数機能・複数モジュールを見渡せる立場へ。全体が見えると、進行や整合性の判断を任され、それがリードの単価につながります。
みっつめは、希少な領域に張ること。S/4HANA移行、周辺システムとの連携、新しい会計基準への対応など、経験者が足りていない領域に自分を寄せていく。人が薄いところに立てば、単価は需給で押し上げられます。
よっつめは、発注元との関係を厚くすること。案件紹介会社を通す場合でも、直接の取引先を持つ場合でも、成果で信頼を積めば次の案件で単価を交渉しやすくなる。実績のない状態でいきなり高い単価は通りませんが、一度きちんと成果を出せば、次からの交渉の土台になります。
「業務が語れる」が最大の武器
ここまで見てきて、繰り返し出てくるのが「業務を理解しているか」です。
SAPの単価が高いのは、システムだけでなく会計・経理の業務が分かる人が希少だから。だからこそ、経理や財務の実務経験を持つ人がSAPに入っていくと、システム専業の人にはない強みを持てます。仕訳の意味を知っている、決算の締めを回したことがある、原価の考え方が体に入っている——この業務の土台があると、上流の設計で説得力が段違いになる。単価を上げたいなら、SAPの技術を追うのと同じくらい、自分の業務理解を深く・広くしていくことが効きます。
単価の数字に振り回されない
最後に、少し引いた視点を。単価の高さは魅力ですが、月額の一点だけで案件を選ぶと足元をすくわれます。
稼働時間、案件の中身が自分の経験になるか、上流に近づけるか、次につながる実績になるか——単価と一緒にこれらを見ないと、高い単価でも消耗するだけの案件を掴むことがある。逆に、少し単価が低くても上流の経験が積める案件が、翌年の単価を大きく引き上げることもある。数字は大事ですが、キャリアの階段として案件を選ぶ視点を忘れないでください。
SAPコンサルの単価は、モジュール・工程・立場・案件性質で大きく変わります。自分が今どのゾーンにいて、次にどの軸を動かせば上がるのか。そこを分かって動くだけで、数年後の水準はまったく違ってきます。相場の具体的な数字は時期で動くので、直近の案件情報で確かめながら判断してください。