経歴書が通って、「一度お話ししましょう」と連絡が来る。参画前の顔合わせです。

ここまで来ると、半分決まったような気がします。書類で見送られる数に比べれば、顔合わせまで進んだ話はたしかに決まりやすい。ただ、**ここで落ちる話もあります。**そして顔合わせで見送られたときは、理由がほとんど返ってきません。「今回は別の方で進めることになりました」の一行だけです。

私は独立してから、顔合わせを受ける側に何度も座りました。当社で外部の方に入ってもらうときには、選ぶ側にも座っています。両方に座って分かったのは、顔合わせの30分で確かめられているのは、経歴書に書いてある能力ではないということでした。

この記事では、顔合わせで発注側が何を見て決めているのかと、その30分の使い方を書きます。書類の側、つまりスキルシートのどの欄が最初に読まれるかは独立コンサルのスキルシートは、発注側のどこを見られているかに分けました。ここで扱うのは、書類が通った後の、対面またはオンラインの30分だけです。

先に結論

  • 顔合わせの時点で、**能力の確認はおおむね終わっています。**見られているのは「この人を自分たちの会議に置いた絵が浮かぶか」です。
  • 同席する人ごとに、見ていることが違います。**一緒に手を動かす人は「一緒に働けるか」、責任者は「任せて大丈夫か」**を見ています。
  • 見られているのは4つ。話の粒度が合うか/質問が状況に届いているか/約束しすぎないか/条件が本当に合っているか。
  • 30分のうち、**自分の話は10分で足ります。**残りは相手の状況を聞く時間に回したほうが、話は進みます。
  • いちばん多い失敗は、経歴書の読み上げです。聞かれたことに、その案件の言葉で答えるだけで、印象ははっきり変わります。

顔合わせは、能力の確認ではない

発注側は、顔合わせの前に経歴書を読んでいます。領域、経験した工程、稼働できる日数、開始できる時期。**書類で分かることは、書類の段階で見終わっています。**そうでなければ、わざわざ30分を取りません。

では、30分で何を見ているのか。選ぶ側に座ったときの自分の頭の中を正直に書くと、こうです。

この人が来週の定例に座っていたら、どういう場面になるか。

業務委託の案件で、発注側がいちばん避けたいのは、入ってもらってから「合わない」と分かることです。入れ替えには手間がかかりますし、その間の工程は止まります。途中で抜ける・抜けられる話が双方にとってどれだけ重いかは、案件の途中で自分から抜けるときに書きました。

だから顔合わせは、能力の試験ではなく、会議に置いたときの絵を確かめる場です。経歴が申し分なくても、絵が浮かばなければ見送られます。逆に、経験が少し足りなくても、絵がはっきり浮かべば決まります。

同席する人ごとに、見ていることが違う

顔合わせには、立場の違う人が並ぶことがあります。全員が出てくるとは限りませんが、**誰が出てくるかで、その案件を誰が決めるのかがだいたい分かります。**最初の数分で、同席者の役割を把握しておくと、話す内容を合わせられます。

同席する人いちばん見ていることその人に届く話し方
一緒に手を動かす現場のリーダー一緒に働けるか。聞けば答えが返ってくるか。自分の仕事が増えないか作業の粒度で話す。何を、どこまで、どの形で渡すか
プロジェクトの責任者任せて大丈夫か。問題が起きたときに先に言ってくれる人か過去に問題をどう上げたかを、1つだけ具体的に
発注を決める部長・役員費用に見合うか。上や社内に説明できるかこの人が入ると何が終わるのかを、一文で
調達・人事の担当条件と手続きが揃うか稼働日数・開始日・場所・期間を正確に

現場のリーダーに向かって経営の話を抽象的に語っても、役員に向かって設定の細部を語っても、話は届きません。同じ経験でも、相手によって切り出す面を変える必要があります。

見られている4つ

1. 話の粒度が、相手と合うか

「FIを担当しました」「PMOとして支援しました」。こうした言い方は、書類では許されても、顔合わせでは弱い。何をやったのかが、相手の頭の中で作業として再生されないからです。

たとえば、同じ経験でも次のように言えば、相手は自分の案件に重ねられます。

債権の消込のルールを決めて、月次の締めで残る差異を、誰がどの画面で見るかまで決めました。

コツは、相手がさっき使った言葉で返すことです。相手が「締めが遅い」と言ったなら、こちらも「締め」の話で返す。自分の得意な用語に置き換えた瞬間、相手は通訳をしなければならなくなります。

2. 質問が、相手の状況に届いているか

顔合わせでこちらがする質問は、こちらの理解度をいちばん正直に映します。

「体制を教えてください」「スケジュールはどうなっていますか」。どの案件にも使える質問は、相手の話を聞いていなくてもできます。一方で、相手の話を受けた質問は、聞いていなければ出てきません。

いちばん決まっていないのは、どこまで過去のデータを持っていくか、ですか。それとも持っていく形のほうですか。

こう聞き返されたとき、選ぶ側は「この人は、もう中身の話をしている」と感じます。質問の質で、経歴書より多くのことが伝わります。

3. 約束しすぎないか

「何でもできます」「すぐにキャッチアップします」。熱意のつもりで言う人は多いのですが、責任者の側には**危ない信号として届きます。**どこまでができて、どこからができないのかを、この人は自分で分かっていないのではないか、と。

選ぶ側が安心するのは、線を自分から引く人です。

この領域の設計はここまでやってきました。この部分は経験が浅いので、最初の2週間で前提を確認させてください。

できないことを言うのは、減点ではありません。入ってから言われるより、いま言われたほうが、発注側はずっと助かります。

4. 条件が、本当に合っているか

書類に書いた稼働日数、開始できる日、働く場所、期間。顔合わせで口にする条件が、書類とずれていると、それだけで信用が落ちます。「週3日と書きましたが、実は週2日半で」と、その場で言い出すのがいちばんまずい。

条件が変わったなら、顔合わせの前に書面で伝えておきます。リモート中心で働きたい場合も、ここで曖昧にしないこと。当社では独立した方に入ってもらうとき、「初回は対面で顔合わせ、以後は月1〜2回の出社、それ以外はリモート」という形を標準にしています。働き方の条件の置き方はフルリモートのコンサル案件は本当にあるかに書きました。

30分の時間割

時間の配分を先に決めておくと、自分の話が長くなるのを防げます。下は目安です。

時間やること気をつけること
最初の2〜3分挨拶。同席者の紹介を聞く誰が現場で、誰が決める人かをここで把握する
次の5分自己紹介。今回の案件に近い経験を1〜2件だけ経歴を頭から話さない。近いものだけ
10〜15分相手から案件の状況を聞き、聞かれたことに答える相手が話している時間を長くする
5分こちらからの質問下の3つから
最後の2〜3分条件の確認と、次の連絡の段取り稼働日数・開始日・誰から連絡が来るか

自分の話は、自己紹介と答えを合わせても10分ほどで足ります。**顔合わせで決まる人は、たいてい相手のほうが長く話しています。**相手が状況を話しているあいだに、相手の頭の中では「この人に、この部分を任せる絵」ができていくからです。

経歴書のことを聞かれないとき、どう返すか

顔合わせでは、経歴書の中身をほとんど聞かれないことがあります。相手はいきなり、自分たちの状況を話し始める。ここで慌てて、経歴の説明に戻ってしまう人がいます。

相手「いま、移行のデータの持ち方がまだ決まっていなくて」 戻ってしまう返し「はい、私は移行を何度か経験しておりまして、まず前職では……」 届く返し「決まっていないのは、持っていく範囲ですか、形のほうですか。前に似た状況だったときは、範囲を先に決めてから形に入りました」

後者は、経歴を話していないようで、**経歴をいちばん効く形で出しています。**相手の問題に、自分の経験を1行だけ重ねる。経歴書は相手の手元にあります。口で繰り返す必要はありません。

こちらから聞いておく3つの質問

最後の5分で聞く質問は、3つあれば足ります。

  1. 「最初の1か月で、終わっていてほしいことは何ですか」 期待の中身を、参画する前に言葉にしてもらえます。入った後の最初の数週間に何を見せるかも、この答えで決まります。
  2. 「いま、いちばん決まっていないのはどこですか」 案件の本当の難所が分かります。答えが曖昧なら、その曖昧さ自体が情報です。
  3. 「入った場合、日々の相談はどなたとすることになりますか」 誰と組むのかが分かります。業務委託では、発注側が作業を細かく指示する形はとりにくいので、**「指示を受ける相手」ではなく「相談する相手」**として聞くのが自然です。

単価の話は、当社の見てきた範囲では、顔合わせの場で出ることは多くありません。**間に別の会社が入っている場合は、条件の話はその会社を通すのが筋です。**直接の取引でこの場で単価を聞かれたときの考え方は、単価交渉のしかたに書きました。

顔合わせと、派遣の「事前面接」は置き場所が違う

ひとつ、法律の側の話を短く書いておきます。

派遣では、派遣先が派遣労働者を事前に選ぶことについて、法律が次のように定めています。

労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。 (労働者派遣法26条6項)

業務委託の顔合わせは、この規定が前提にしている派遣とは別の契約の形で、発注側が「誰に頼むか」を選ぶ場として一般に行われています。

ただし、顔合わせの場で「毎日の作業は、こちらのリーダーの指示で動いてもらいます」「勤怠はこちらのシステムで」と言われたら、それは契約の形そのものの問題になり得ます。どこで線を越えるのかは偽装請負とはに整理しました。契約の形によって結論が変わるので、個別の判断は専門家に確認してください。

見送られやすい振る舞い

選ぶ側に座ったとき、「ここで決まらなかったな」と感じた場面を並べます。

  1. **経歴書を頭から読み上げる。**相手は手元の紙を目で追いながら、同じことを聞くことになります。
  2. **「何でもできます」と言う。**線が引けない人だと受け取られます。
  3. 前の現場や、相手の今の体制を悪く言う。「今のベンダーさん、どう思いますか」と水を向けられても、評価は口にしないほうが安全です。入った後、同じ会議に座る相手かもしれません。
  4. **条件をその場で変える。**書類と違う稼働日数や開始日を、口頭で初めて出す。
  5. **自分の話で30分を埋める。**相手が状況を話す時間がなくなり、任せる絵ができないまま終わります。

どれも、能力の問題ではありません。準備と順番で避けられるものばかりです。

終わった後の連絡

顔合わせが終わったら、当日中に短いお礼を送ります。直接の取引なら相手に、間に会社が入っているならその会社に。内容は、話を聞いて分かったことを1行と、条件に変わりがないことを1行で足ります。長い感想文は要りません。

結果の連絡が来ないときは、私は1週間を目安に、一度だけ状況を尋ねています。何度も催促すると、決まりかけていた話が重くなります。

見送られたときは、理由を聞くなら一度だけにします。

次に活かしたいので、差し支えない範囲で、決め手になった点を教えていただけますか。

返ってこないことのほうが多いですが、返ってきたときの一言は、次の顔合わせでいちばん効きます。

顔合わせが通って、契約書が届く前に「来週から入ってください」と言われることもあります。その場合に最初の1週間で何を残しておくかは、契約書が届く前に稼働が始まったらに書きました。複数の話が同時に進んでいて、どれを選ぶかで迷うときは案件が2つ重なったとき、どちらを取るかへ。

まとめ

  • 顔合わせの時点で、能力の確認はおおむね終わっている。見られているのは「この人を会議に置いた絵が浮かぶか」。
  • 同席する人ごとに見ていることが違う。現場は一緒に働けるか、責任者は任せて大丈夫か、決める人は説明できるか。
  • 見られている4つ=話の粒度/質問の質/約束しすぎないこと/条件の一致。
  • 30分のうち、自分の話は10分で足りる。相手が話す時間を長くする。
  • 経歴書のことを聞かれなければ、相手の問題に自分の経験を1行だけ重ねて返す。
  • こちらから聞くのは3つ=最初の1か月で終わっていてほしいこと/いちばん決まっていないところ/日々の相談相手。
  • 派遣の事前面接とは契約の置き場所が違う。ただし、顔合わせで指示や勤怠の話が出たら、契約の形を確かめる。
  • 見送られる振る舞いは、どれも準備と順番で避けられる。

書類が通った時点で、あなたの経験はもう相手に伝わっています。**顔合わせで足すべきなのは経験の説明ではなく、相手の状況を一緒に見ている姿です。**30分の半分以上を相手の話に使えたなら、その顔合わせはたいてい悪くない終わり方をしています。

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出典:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)26条6項(e-Gov法令検索のAPIで条文原文を取得して引用、2026-09-19時点)

※本記事は、筆者が顔合わせを受ける側・選ぶ側として見てきた範囲の整理です。発注側の考え方は会社や案件によって違います。契約の形に関わる個別の判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。