「コンサル 個人 始め方」で調べている方は、独立するかどうかはもう決めていることが多いです。迷っているのは、決断ではなく順番のほうです。
何から手を付ければいいのか。開業届が先か、案件が先か。名刺は作るべきか。法人にすべきか。
先に、順番の決め方だけ書きます。
始め方の順番は、手続きの一覧からではなく、最初の1社が決まる場所から逆算して決める。
だから、この記事も**最初の1社の話から始めます。**手続きの話は、そのあとに来ます。
「最初の1件」については、当社は3本を役割で分けています。この記事は**1本目(順番)**です。
| 知りたいこと | 読む記事 |
|---|---|
| 始め方の順番全体(手続き・契約・入金まで) | この記事 |
| 看板が外れたあと、1件目をどう取りに行くか(動き方) | 独立コンサルの最初の1件は、どこから来るか |
| 話がまとまったあと、その1件をいくらで出すか(値付け) | 独立して最初の1件を、いくらで出すか |
この記事は、ファーム出身とは限らない方が、個人として受ける形を一から作る場合の順番です。事業会社の経理・情報システム・企画から個人で受け始める方も、こちらを読んでください。
最初の1社は、どこから来るか
実際に来る経路は、だいたい3つに分かれます。この3つ以外から来ることは、最初の1年ではまず起きません。
経路1:前職の周辺から
もっとも多い経路です。元同僚、元上司、前の案件で一緒だった発注側の担当者。独立を伝えた相手の数が、そのまま初速になります。
ここで大事なのは、売り込まないことです。伝えるのは事実だけでいい。「いま、こういう領域で個人として動いています」。相手の頭の中に選択肢を1つ置いてもらう、それ以上のことをすると、たいてい逆に動きます。
ただし、**在職中の競業避止義務と、顧客の引き抜きに当たらないかは先に確認してください。**ここは感情ではなく契約の問題です。競業避止義務に整理しました。
経路2:同業からの再委託
すでに独立している人や、小規模なコンサルティング会社が受けた案件の一部を受ける形です。単価は直の契約より下がりますが、最初の1件としては早い。
この形は再委託になるため、支払期日の扱いが直の契約と違う場合があります。間に会社が入ったときに何が差し引かれているのかは発注側が払う金額と、自分が受け取る金額の差に、当社の台帳の計算そのものを開いて書きました。
経路3:直の相談から
発注側が直接探して声をかけてくる形です。単価はいちばん高くなりますが、**「この領域ならこの人」という具体の縦深がないと発生しません。**個人で始めた最初の1本目でここを狙うのは、現実的ではありません。
3つの経路の性質と単価の付き方の違いはフリーコンサルの案件は、どこから来ているのかに分けて書きました。
そもそも、発注が出る会社は限られている
もう一つ、先に知っておいたほうが早いことがあります。独立した人に発注を出す会社には、条件があります。
当社は需要側の会社を46社実査して、規模・部門・タイミングの3条件を整理しました。結論は独立コンサルに発注が出る会社は、どんな会社かにあります。声をかける相手を選ぶ段階で、ここを外していると初速が出ません。
最初の1社のために、先にやる3つ
経路が分かると、先にやることも決まります。3つです。
1. 「何屋か」を一行で言えるようにする
これが最初です。屋号でも、資格でも、経歴でもありません。
「◯◯で困っている◯◯な会社の、◯◯を解決します」
この一行が詰まらずに言えないうちに人に会うと、相手も「で、この人には何を頼めるんだっけ」となって、せっかくの一回が流れます。
広くすると、誰の記憶にも残りません。「経理も業務改善もひととおりやれます」は、相手の頭の中でどの引き出しにも入らない。狭くて輪郭のはっきりした人が、困りごとが起きた瞬間に思い出されます。
何を売ると決めるかの整理はコンサルの独立準備は何からとコンサルの独立は、何が揃えば踏み出せるのかに書きました。
2. 声をかける相手を、名前で書き出す
30人ほどで足ります。**頭の中で数えるのではなく、書き出してください。**書き出すと、思っていたより多いか、思っていたより少ないかが分かります。少なければ、それが最初の課題です。
連絡するのが怖い、という感覚は普通です。実力のある人ほど、「独立しました」の一通が出せない。この怖さの中身についてはフリーランスの営業が怖い人へに書きました。
3. 過去の仕事を、根拠として書ける形にしておく
「支援しました」ではなく、範囲・規模・自分がやった動詞・期間で書く。**在職中にしか取れない記録があります。**辞めてからでは思い出せません。書き方は独立コンサルの実績は、どう書けば根拠になるかにまとめました。
発注側が経歴の書類のどこを見ているかは、当社が様式を決めたときの判断も含めて独立コンサルのスキルシートは、発注側のどこを見られているかに書いています。
決まった瞬間に、必ず必要になる3つ
ここからが手続きの話です。ただし、**手続きを全部やる必要はありません。**必要なのは、「最初の1社が決まった瞬間に、無いと止まるもの」だけです。
それは3つです。
- 名乗り — 屋号と開業届。相手が支払先として登録できる状態
- 契約の型 — 準委任か請負か。何を約束して、何を約束しないか
- 入金までの導線 — 請求書の様式、締めと支払期日、そこまで持ちこたえる手元資金
この3つは、案件が決まってから用意すると**必ず着手が遅れます。**そして遅れた分は、まるごと自分の空白期間になります。
私の場合、最初の話がまとまってから実際に稼働を始めるまでに、**2週間近くかかりました。**理由は単純で、相手の購買部門から「支払先として登録するので、屋号・口座・インボイスの登録番号を送ってください」と言われて、そのどれも持っていなかったからです。
相手は待ってくれます。ただ、その2週間は請求できません。
1つめ:名乗り──屋号と開業届
屋号は無くても事業はできます。個人名のままでも契約はできます。ただ、実務では屋号があったほうが早い場面が3つあります。
- 屋号名義の銀行口座を作れる(事業のお金と生活費が分かれる)
- 発注側の購買システムに「取引先名」として登録しやすい
- 検索されたときに、何をやっている人か伝わる
名前を決めるとき、一つだけ勧めているのは、凝った造語より、業務が分かる語を入れておくことです。あとで名刺やサイトの一行目を書くときに、説明の手間が減ります。詳しくはフリーランスの屋号の付け方に書きました。
期限があるのは、書類2枚だけです。
| 書類 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 納税地の税務署 | 事業を始めた日から1か月以内 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 納税地の税務署 | その年の1月16日以降に開業した場合、開業から2か月以内 |
開業届は、期限を過ぎても実質的な罰則はありません。**問題は2枚目のほうです。**青色申告承認申請書を出し忘れると、初年度は白色申告になり、65万円の控除を丸ごと落とします。
**2枚同時に出す。**独立を決めた日に、これだけはカレンダーに入れてください。書き方の各欄は開業届の書き方に、初年度の申告の流れは青色申告のやり方に分けてあります。
屋号名義の口座は、開業届の控えがあると作れます。事業用口座を分ける話にも書きましたが、分けるのは節税のためではなく、確定申告の作業量を減らすためです。
インボイスの登録番号を求められる場面は確かにありますが、登録するかどうかは、**取引相手が誰かで判断が変わります。**免税事業者のまま始める選択肢もあり、経過措置も残っています。判断材料はインボイス登録の要否と経過措置に整理しました。
2つめ:契約の型──何を約束して、何を約束しないか
個人でコンサルを始めるとき、契約の形はだいたい業務委託です。ただ業務委託という言葉自体は契約類型の名前ではなく、中身は準委任か請負のどちらかに寄ります。
- 準委任:時間と労務の提供を約束する。成果物の完成そのものは約束しない
- 請負:成果物の完成を約束する。完成しなければ報酬が発生しない
コンサルの仕事は準委任で回ることが多いのですが、契約書のタイトルが「業務委託契約書」でも、中の条文が請負になっていることがあります。ここを読まずに押印すると、検収の場で揉めます。私は一度やりました。違いは準委任と請負の違いに書いています。
最初の1件で時間がないなら、見る場所を絞ってください。
- 報酬と稼働の幅 — 月額いくらで、実稼働が何時間から何時間までなら定額か。下限を下回ったとき、上限を超えたときの単価はいくらか
- 締めと支払期日 — いつ締めて、いつ払うか
- 検収・確認の期間 — 相手が稼働報告を確認する期間に上限があるか。ここが無期限だと、支払が動きません
- 中途解約の予告期間 — 何日前に言われるか。ここが短いと、次を探す時間が取れません
- 成果物の権利 — 作った資料が誰のものになるか
読む順番は業務委託契約書のチェックの順番に、解約まわりは途中で切られたときに分けてあります。社員のときと責任範囲がどう変わるかは業務委託でコンサルを受けるとき、何が変わるかに書きました。
なお、2024年11月1日に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、発注した側が、給付の内容・報酬額・支払期日などを書面または電磁的方法で明示することが求められています。つまり、「条件を書面でください」と言うのは、こちらのわがままではありません。
当社が発注する側になったときに、この法律に合わせて自社の契約を直した記録はフリーランス新法に、発注する側として合わせるとき、どこを直すことになるかにあります。制度の全体像はフリーランス新法とはに整理しました。法の適用は個別事情で変わるため、実際の判断は公的機関の公表資料と専門家の確認を取ってください。
3つめ:入金までの導線──最初の入金は最短でも翌月末
請求書は、案件が決まってから作ると必ず慌てます。必要なのは、屋号・住所・振込先・請求番号・件名・数量と単価・消費税・(登録していれば)登録番号。**先に一枚、空の様式を作っておく。**それだけで、初回の請求が15分で終わります。中身は請求書の書き方にまとめました。
そして、ここは正直に書きます。稼働した月の報酬は、翌月には入りません。
| 段階 | かかる時間の目安 |
|---|---|
| 話がまとまる → 契約締結・支払先登録 | 1〜2週間 |
| 稼働開始 → 当月末締め | 最大1か月 |
| 締め → 支払期日 | 翌月末が一般的。それより長い条件もある |
つまり、**8月に話がまとまっても、最初の入金は10月にずれ込むことがあります。**個人で始めた直後にここで詰まる人がいちばん多い。手元にいくら置いておくべきかはフリーランスの貯金に、生活費と事業費の分け方も含めて書きました。
先に作らなくていい、3つのもの
逆に、後回しでよかったものも書いておきます。
- 法人 — 最初は個人で始めて問題ありません。所得と消費税と信用の3つのサインが出てから考える話です。判断の順番はフリーランスの法人化に書きました
- ホームページ — 最初の1件は検索からは来ません。作るなら、実績が数件たまってからのほうが中身が書けます
- 凝った意匠の名刺やロゴ — 相手が見ているのは屋号ではなく、何をやった人かです
最初の30日を、順番で置くと
| 日 | やること |
|---|---|
| 1〜3日目 | 「何屋か」の一行を固める。声をかける相手を30人書き出す |
| 1〜3日目 | 屋号を決める。開業届と青色申告承認申請書を書いて出す |
| 3〜7日目 | 屋号名義の口座を開く。請求書の様式を1枚作る |
| 1〜2週目 | 契約の型(準委任/請負)と、契約書で見る5点を自分の言葉で言えるようにする |
| 1〜4週目 | 経路1(前職の周辺)から順に連絡する。並行して経路2の相手を探す |
| 随時 | インボイス登録の要否を、実際の取引相手を見て判断する |
**期限があるのは開業届と青色申告承認申請書だけです。**それ以外は、早いに越したことはないという程度のものです。
なお、退職日がもう決まっている方は、健康保険と年金の切替(退職日の翌日から14日以内)や任意継続(退職後20日以内)が先に走ります。退職日を起点にした3か月分の締切と順番は独立直後の3か月に、実際にやったことに分けました。
コンサルティングファーム出身でない場合、いちばん効くこと
最後に、非ファーム出身の方に向けて足しておきます。
個人でコンサルを始める人の全員が、コンサルティングファームを出た人ではありません。事業会社の経理、情報システム、経営企画から、個人で受け始める方がいます。そのときに効くのは、「コンサルらしさ」ではなく、当事者として持っていた責任の範囲です。
- 決算を締めていた人は、締まらない理由を知っています
- 基幹システムの入替を受け入れ側で経験した人は、受け入れテストで何が起きるかを知っています
- 予算を作っていた人は、数字が現場でどう歪むかを知っています
**これは、外から入る立場では手に入りにくい情報です。**一行の名乗りは、ここから作るほうが強くなります。経理からこの道に入る場合の具体は経理の経験で独立するとき、何が売り物になるかに書きました。
まとめ
- 始め方の順番は、手続きの一覧ではなく最初の1社が決まる場所から逆算する
- 最初の1社が来る経路は3つ。**前職の周辺/同業からの再委託/直の相談。**1本目は経路1がいちばん早い
- そのために先にやるのは3つ。「何屋か」の一行/声をかける相手30人/過去の仕事を根拠の形にする
- 決まった瞬間に必要になるのも3つ。名乗り(屋号・開業届)/契約の型(準委任か請負か)/入金までの導線
- 期限があるのは**開業届(1か月以内)と青色申告承認申請書(開業から2か月以内)の2枚だけ。**同時に出す
- 契約書で最低限見るのは5点。報酬と稼働の幅/締めと支払期日/確認期間/解約予告/成果物の権利
- 発注側には取引条件を明示する義務がある(フリーランス新法)。書面を求めるのはわがままではない
- **最初の入金は最短でも翌月末。**8月に決まっても10月にずれることがある
- 法人・ホームページ・凝った名刺は後回しでいい
- 非ファーム出身なら、当事者として持っていた責任の範囲が一行の名乗りの材料になる
独立した人を6年見てきて思うのは、準備が足りなくて失敗した人より、準備が終わるのを待って動き出せなかった人のほうが多いということです。
そろえるものは、意外と少ない。一行を決めて、30人に伝えながら、3つを並行で置けば間に合います。
自分の現在地を先に整理しておきたい方は、30秒の独立準備度チェックから入ってみてください。登録は要りません。
関連記事:独立コンサルの最初の1件は、どこから来るか/独立して最初の1件を、いくらで出すか/独立直後の3か月に、実際にやったこと/コンサルの独立準備は何から/フリーコンサルの案件は、どこから来ているのか/独立コンサルに発注が出る会社は、どんな会社か/開業届の書き方/青色申告のやり方/屋号の付け方/事業用口座/請求書の書き方/業務委託契約書のチェック/準委任と請負の違い/フリーランスの貯金/フリーランスの法人化
出典:青色申告承認申請書の期限(その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は事業開始の日から2月以内)は国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」、開業届の提出時期は国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(事業の開始等の事実があった日から1月以内)を、いずれも2026年8月29日に確認しました。なお、同じ国税庁の「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」は開業届について「その事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」と記しており、2つの公表資料で書き方が異なります。いずれにしても早く出しておけば済むものですが、期限を厳密に確認したい場合は税務署にご確認ください。フリーランス新法の施行日(2024年11月1日)と取引条件の明示に関する記載は、当社が2026年7月に自社の契約ひな形を点検した際に整理した内容に基づきます。この点検では公的機関の原典PDFを取得できておらず、複数の二次情報が一致する範囲までで止めています。発注が出る会社の3条件は、当社が2026年8月に需要側46社を実査した記録に基づきます。着手・入金までの日数の目安は当社および当社が関与した取引での観測であり、統計調査ではありません。
※本記事は当社の実務経験と社内記録に基づく整理です。税務の手続きと法令の適用は個別の事情で結論が変わります。実際の判断は税務署・税理士、および公的機関の公表資料でご確認ください。