「経理でフリーランスとして独立して、本当に食べていけるのか」。この問いの前で何年も足踏みしている人を、私は何人も見てきました。私自身、早稲田を出てアビーム、アクセンチュアと経理・財務の現場を歩き、最後は会社を辞めて自分の会社を作った人間です。だからはっきり言えます。月次決算を回せる、仕訳が読める、それは確かな力です。でも、経理のフリーランスを考える人が本当に怖いのは、その力が会社の外でいくらの値段になるのか、誰も教えてくれないことなんです。この記事では、経理の実務を「安い手仕事」で終わらせず「高く売れる武器」に変えるための現実的な二つの道と、踏むべき順番を、当事者の本音で書きます。
経理のフリーランスで食べていけるのか、まず正直に答える
結論から言います。経理のフリーランスで食べていくことは、できます。ただし「会社の中でやっていた経理を、そのまま社外に持ち出す」やり方では難しい。会社員時代は、あなたの仕事の良し悪しは給料という一つの数字にならされて見えません。でも独立した瞬間、仕事は一つひとつ値段をつけられて市場に並びます。そこで初めて、自分の実務が外でいくらなのか、という現実に向き合うことになる。
私が独立して最初に痛感したのは、「正確に締められる」だけでは値段が上がらない、という事実でした。月次をきっちり回す。仕訳をミスなく切る。それは前提であって、差別化になりません。同じことができる人が市場にたくさんいるからです。だから経理の独立は、「何ができるか」より「自分をどこに置くか」で食えるかどうかが決まる。私はそう考えています。
もう一つ正直に言うと、独立した初日からいい仕事が降ってくることはありません。最初の半年から一年は、目の前の実務を回しながら、自分の値段を上げる土台を仕込む期間です。ここを焦って安売りで埋めると、その単価が基準になって、ずっと安いまま固定される。入口の選び方が、その後の数年を決めます。
なぜ経理は「安い手仕事」に見られてしまうのか
経理という仕事は、外から見ると「決まった作業を正確にこなす人」に見えます。請求書を処理する、記帳する、締める。手順が決まっているように見えるから、買う側は「誰がやっても同じなら、安いほうがいい」と考える。これが、経理の腕が値段で叩かれてしまう構造です。理不尽ですが、現実です。
でも、現場を知っている人ならわかるはずです。本当に価値があるのは、数字を「処理する」ことではなく、数字から会社の状態を「読む」ことだと。なぜ今月は資金繰りが苦しいのか。どの事業が、表の売上の裏で本当は利益を食っているのか。経営者が夜中に気にしているのはそこです。ところが多くの経理担当は、この「読む力」を自分の言葉で説明できていない。だから作業の値段で見られてしまう。
私がアクセンチュアにいた頃に骨身に染みたのは、同じ作業をしていても、「その数字が経営の判断にどう効くか」まで語れる人は、まったく別の扱いを受けるということでした。経理を会計の枠に閉じ込めず、経営管理という広い場所に置き直す。これが、安い手仕事から抜け出す最初の一歩です。
道その一|経理代行から始めて、まず独立を成立させる
現実的な入口の一つが、経理代行です。中小企業やスタートアップには、経理の専任を雇うほどではないけれど、毎月の記帳や請求、支払い管理は誰かに任せたい、という会社がたくさんあります。経理の代行をフリーランスで請けるこの形は、需要がはっきりしていて、実務経験のある人がそのまま入りやすい。独立を生活として成立させる「現金の橋」として、堅い選択だと思います。
ただし、ここで止まると単価は上がりにくい。代行は「作業の対価」で値付けされるので、件数を増やすほど自分の時間が削れていきます。私が伝えたいのは、代行をゴールではなく「足場」として使うこと。複数の会社の数字を預かる立場は、経営者の生の悩みに毎月触れられる、めったにない場所です。ここで信頼を積み、「この人は数字が読める」と思われた瞬間、相談される範囲が一気に広がります。
具体的には、月次を締めて納品して終わり、にしない。「先月と比べてここが変わりました」「この支出は来月の資金繰りに効いてきます」と一言だけ添える。たったこれだけで、あなたは作業者から相談相手に変わります。私はこの一言を惜しまなかった人が、次の高い仕事へ橋を架けているのを、何度も見てきました。経理代行は安く見られがちですが、入り方と振る舞い次第で、上の階段への踊り場にできます。
道その二|SAP・経営管理に接続して、専門性で値段を上げる
もう一つの道が、経理の実務を専門領域に接続して、代わりのきかない人になることです。私自身が歩んだのはこちらでした。財務会計の経験を、SAPという大きな会計システムを導入する仕事と結びつけた。SAPは多くの大企業が基幹システムとして使うソフトで、それを入れる・直す現場では、会計の言葉とシステムの言葉の両方がわかる人が、決定的に足りていません。
ここが核心です。経理の実務経験を持つ人が、SAPや経営管理の知識を足すと、「現場の数字がわかる」かつ「仕組みを設計できる」という、片方だけの人にはない立ち位置が生まれます。私が独立後に関わってきた導入の現場でも、こうした人材は、一般的な経理代行よりはっきり高い水準で扱われていました。具体額は案件で大きく振れるので断定はしません。これは保証ではなく、あくまで私が見てきた範囲での目安です。ただ、専門性を足すほど値段の天井が上がるのは確かだと感じています。
もちろん、いきなりSAPのプロにはなれません。でも、いまの経理の実務は、これ以上ない土台です。決算の流れ、勘定科目の意味、月次の勘どころ。これを身体で理解している人が、システムや経営管理の側へ半歩踏み出すと、見える景色がまるで変わる。経理の独立を「作業の延長」で終わらせるか、「専門性への投資」として設計できるか。ここで、数年後の年収のレンジは大きく変わってきます。
二つの道は、どちらかではなく「順番」で考える
ここまで二つの道を書きましたが、私の本音は「どちらか一つを選べ」ではありません。多くの人にとって現実的なのは、まず経理代行などで独立を成立させて現金を作りながら、その裏で静かに専門性を育てていく、という順番です。生活を支える足場があるから、焦らずに次の武器を磨ける。無収入で勝負しようとすると、判断が目先に寄って、結局は安売りに流れます。これは精神論ではなく、お金の話です。
私が独立して心からよかったと思えたのは、目の前の仕事をこなしながら、同時に「自分はどこでいちばん高く役に立てるか」を考え続けたからでした。経理の実務という確かな足元を持ったまま、半歩ずつ専門性の高いほうへ重心を移していく。フリーランスの経理として長く食べている人は、たいていこの二段構えで自分の値段を上げています。
だからいちばん大事なのは、自分がいま二つの道のどこに立っているかを、正確に知ることです。まだ足場を作る段階なのか、もう専門性に投資すべき段階なのか。現在地がずれていると、努力の方向もそのままずれます。ここを見誤らないことが、何年もの遠回りを防ぐ、いちばんの近道です。
まず、自分の現在地を知ることから始めてほしい
経理からフリーランスとして独立して、食べていけるのか。私の答えは「やり方と順番次第で、食べていける」です。安い手仕事のまま市場に出れば叩かれるし、専門性に接続できれば値段の天井は上がる。その分かれ道は、才能ではありません。「自分の現在地を正しく知って、正しい順番で動けるか」。ただそれだけです。
私はいま、かつての自分のように足踏みしている人の伴走を、一人ひとり丁寧にやりたいと思っています。だから一度に向き合える人数は、どうしても限られます。それでも、まず自分が二つの道のどこに立っているのかだけは、今日この場で確かめてほしい。それは無料で、今すぐできます。
30秒で終わる無料のタイプ診断を用意しました。いくつかの質問に答えるだけで、あなたがいま足場づくりの段階なのか、専門性に投資すべき段階なのか、現在地が見えてきます。診断のあとは、続きをLINEで受け取れます。難しい準備は何もいりません。まずは自分の立っている場所を、ここで確かめてみてください。