独立して2年目くらいになると、誰かに言われます。「持続化補助金、出してみたら」と。

名前は聞いたことがある。販路開拓に使えるらしい。50万円くらい出るらしい。そこまでは分かっていて、公募要領を開いた瞬間に閉じる。だいたいこの流れです。

第20回の公募要領が、2026年5月27日に公開されました。申請の受付は11月5日から12月15日まで。半年近く先の話に見えますが、独立した個人がこの補助金でつまずくのは、締切そのものではありません。

締切が2つある

まず、ここだけは頭に入れておいてください。

  • 申請の受付締切:12月15日
  • 商工会・商工会議所への事業支援計画書の発行受付締切:12月4日

11日、早い。

この補助金は、自分ひとりで書いて出せる制度ではありません。商工会または商工会議所の支援を受けながら取り組むことが求められていて、その証として事業支援計画書という書類を発行してもらう必要があります。発行するのは自分ではなく、商工会・商工会議所です。

つまり、実務上の締切は12月4日。しかも12月4日は「窓口が受け付けてくれる最終日」であって、「駆け込めば必ず出る日」ではありません。計画書の中身を見て、担当者と何往復かして、そこから発行される。11月の後半に相談に行った人が、間に合わないという結末をたどるのはこの構造のせいです。

先に押さえるのは、申請書の書き方ではなく、窓口の予約です。

自分が「小規模事業者」に当たるか

対象は小規模事業者です。中小企業ではありません。ここは中小企業基本法の定義がそのまま効きます。

  • 商業・サービス業――従業員20人以下ではなく、5人以下
  • 製造業その他――従業員20人以下

「商業」は卸売業・小売業を指します。ひとりで独立してコンサルティングや受託開発をしている人は、まず間違いなくこの範囲に入ります。ひとりで仕事をしている人にとって、この要件はハードルになりません。

なお、従業員の数え方(何を常時使用する従業員として数えるか)は制度ごとに細かい定義があります。人を雇っているなら、公募要領の定義で数え直してください。

窓口が2つに分かれている点も、最初に確認しておく必要があります。事業所が商工会の管轄地域にあるか、商工会議所の管轄地域にあるかで、申請先の事務局が違います。自分の地域がどちらかは、商工会検索サイトか、お住まいの市区町村の商工担当課で分かります。

金額の構造――50万円が基本で、上乗せは条件つき

第20回の数字はこうなっています。

区分
補助上限額(基本)50万円
インボイス特例による上乗せ+50万円
賃金引上げ特例による上乗せ+150万円
両特例に該当する場合の上乗せ最大200万円

補助率は3分の2。賃金引上げ特例に取り組む赤字事業者は4分の3です。

インボイス特例は、免税事業者だった人がインボイス発行事業者として登録した場合の上乗せ。賃金引上げ特例は、従業員の賃金を引き上げる取り組みへの上乗せです。ひとりで仕事をしている人には、後者は基本的に縁がありません。

いちばん怖いのは、ここ

第20回の公募要領には、独立した個人が読み落とすと痛い一文があります。

インボイス特例と賃金引上げ特例を希望した場合、通常枠・インボイス特例・賃金引上げ特例の要件を1つでも満たさない場合、特例による上乗せ部分だけでなく、補助金全体が交付対象外となる。

上乗せ分だけが消えるのではありません。全部が消えます。

50万円で確実に通る計画に、インボイス特例をつけて100万円を狙う。それ自体は普通の判断です。ただし特例の要件を外した瞬間、手元に残るのは0円で、それまでに動いた時間と、支払った経費だけが残る。

補助金は原則として後払いです。先に自分の現金で払って、実績報告を出して、審査を経て入金される。要件を外すというのは、「上乗せをもらい損ねる」ではなく、「立て替えた全額が自己負担で確定する」という意味です。

欲張るかどうかは、要件を全部読んで、自分の事業計画がその要件を素直に満たすかを確認してから決めてください。少しでも解釈に幅が要る特例なら、外す判断のほうが強い。

使途は「販路開拓」――ここを取り違えない

補助の対象になるのは、自ら策定した経営計画に基づいて実施する販路開拓の取り組みと、それと併せて実施する業務効率化・生産性向上の取り組みです。

独立した個人がやりがちな取り違えは、順番の逆転です。「パソコンを買い替えたい」「会計ソフトを入れたい」から発想して、あとから販路開拓の理由をつける。この向きで書いた計画は、読む側にはすぐ分かります。

先にあるのは経営計画です。誰に、何を、どうやって届けるつもりなのか。そのために何が足りないのか。その足りないものを埋める手段として、はじめて経費が出てくる。この順番でしか通りません。

そして経営計画は、補助金のために書く紙ではありません。独立して数年たつと、自分の商売を言葉にする機会は自然にはなくなります。この補助金の一番の使いどころは、実は50万円ではなく、商工会・商工会議所の担当者という第三者を相手に、自分の事業を説明させられる時間のほうかもしれません。単価の話も単価の決め方と同じで、他人に説明できない値付けは通らない。

準備の順番

11月5日から逆算すると、こうなります。

  1. **GビズIDプライムのアカウントを先に取る。**電子申請を使う制度では、このアカウントが入口になります。オンライン申請の審査は24時間365日速やかに行われるようになりましたが、書類申請の場合は審査期間が最大1か月に変更されています。書類申請ルートに回ると、11月の準備と真正面からぶつかります。最初にやる作業がこれです。
  2. **管轄が商工会か商工会議所かを確認し、窓口に相談の予約を入れる。**この時点では計画は白紙で構いません。予約を取ることが目的です。
  3. **公募要領を、特例の要件から読む。**基本の50万円だけで出すのか、特例を狙うのか。ここで方針を決めてから計画を書く。
  4. 経営計画を書き、事業支援計画書の発行を依頼する。逆算の起点は12月15日ではなく12月4日
  5. **経費の支払いと記録の準備をしておく。**後払いである以上、実績報告の段階で証拠が要ります。帳簿と書類の保存の作法がそのまま効きます。

出さないという判断もある

正直に書きます。この補助金は、ひとりで仕事をしている全員が取りに行くべきものではありません。

補助率3分の2ということは、50万円をもらうために75万円を使うという意味です。もともと使う予定のなかった75万円を、補助金があるからという理由で動かすなら、25万円の持ち出しが増えただけになります。手を動かす時間、計画を書く時間、窓口と往復する時間も、当然かかります。

**もともとやる予定だった販路開拓がある人にとっては強い制度で、予定がない人にとっては費用が増えるだけの制度です。**この線引きだけは、申請書を書き始める前に自分でつけておいてください。

まとめ

  • 第20回の公募要領は2026年5月27日公開。申請受付は11月5日〜12月15日、商工会・商工会議所への事業支援計画書の発行受付は12月4日まで。実務上の締切は後者。
  • 対象は小規模事業者。商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下(中小企業基本法の定義)。ひとりで仕事をしている人は範囲に入る。
  • 補助上限は50万円。インボイス特例+50万円、賃金引上げ特例+150万円、両方で最大200万円の上乗せ。補助率は3分の2、賃金引上げ特例に取り組む赤字事業者は4分の3
  • 特例を希望して要件をひとつでも満たさないと、上乗せ分だけでなく補助金全体が交付対象外になる。欲張るかどうかは要件を全部読んでから。
  • 補助の対象は経営計画に基づく販路開拓。経費から逆算した計画は通らない。
  • 電子申請の入口になるGビズIDプライムは、書類申請だと審査に最大1か月。着手の1手目はここ

制度の詳細と最新の要件は、商工会地区・商工会議所地区それぞれの事務局が公開している公募要領が正本です。金額・特例・期日は回次ごとに変わるため、申請前に必ず最新版の公募要領を確認し、判断に迷う点は窓口の担当者に直接聞いてください。

参考:中小企業庁「『小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>(第20回)』の公募要領を公開しました」(2026年5月27日)/中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」/J-Net21(中小機構)「『持続化補助金<一般型・通常枠>』第20回公募要領を公開 受け付け開始は11月5日」/GビズID(デジタル庁)