ERPの導入をやってきた人から、独立の相談を受けるとき、いちばん多く出る言葉があります。

「自分のところはSAPじゃないんです。」

Oracleの会計、Dynamics、国産の会計・ERP製品。規模の大きい導入もあれば、中堅企業の入れ替えを何本も回してきた人もいます。仕事の質が低いわけではまったくない。ただ、独立を考えて情報を探し始めると、出てくる話がSAPばかりであることに気づく。

先に、この記事の結論を書きます。

製品が変わると、案件の「出方」は変わる。ただし、売っているものは変わらない。

この2つを分けないまま独立すると、「自分の製品では独立できないのではないか」という結論に早く着きすぎます。実際には、変わっているのは入口の形であって、中身ではありません。

先に、この記事で書けないことを書いておきます。

正直に書きます。私はSAPの財務会計(FI)の導入を歩いてきた人間で、他製品の案件を自分で受けた実績はありません。

したがって、この記事では次のことは書きません。

  • 他製品の単価の水準(当社に実績がないので、目安として出せる数字を持っていません)
  • どの製品の案件が多いか(当社は数えていません。数えた統計を持っていないものを、多い・少ないと書きません)
  • 特定の製品の将来性についての評価

書けるのは、製品が変わっても動かないものと、動くものの切り分け、そして自分の領域の案件の出方を、自分で測る手順までです。この線は最後まで守ります。

この記事で扱わない範囲。

製品が変わっても、動かないもの

まず、動かない側から。ここが土台なので、先に固めます。

1. 発注側が買っているのは、製品の操作ではない

ERPの導入で、外部の人に払われているお金は、製品を触れることに対してではありません。

払われているのは、その会社の業務を、システムの形に決め切ることに対してです。どの単位で締めるのか。どの数字を誰が承認するのか。例外処理をシステムに入れるのか、外に出すのか。ここを決めて、決めた責任を持つ。

この中身は、製品が変わっても変わりません。会計の理解、業務の聞き取り、決めた内容を文書にして通す力は、そのまま持ち越せます。

2. 売られる単位(粒度)が変わることも、同じ

独立すると、会社員のときのようにフェーズ単位で張り付くのではなく、工程の一部を切り出して発注されるようになります。上流は期間が短いので、上流だけを看板にすると月の稼働が埋まらない。

これは製品の問題ではなく、発注の形の問題です。SAPでも非SAPでも同じように起きます。詳しくはITコンサルがフリーランスになると、案件はどう変わるかに書きました。

3. 契約・精算・支払サイトの実務

準委任か請負か。稼働報告の幅をどう作るか。締めから入金まで何日か。

ここは**製品と一切関係がありません。**知らないまま契約すると損をする場所も同じです。特に精算の幅は、発注側が払う金額と、自分が受け取る金額の差は何でできているかに計算そのものを開いて書きました。

4. 「一人で持てる範囲」を言えるかどうか

発注側が見ているのは年数ではなく、初日から一人で持てる範囲です。工程と領域の言葉で言えるかどうか。

この基準も製品によりません。範囲の言い方は独立コンサルのスキルシートは、発注側のどこを見られているかに書いてあります。

製品が変わると、動くもの

ここからが本題です。私の見立てでは、動くのは次の4つです。

1. 案件の情報が「見えるかどうか」が変わる

いちばん大きいのがこれです。

SAPの案件は、募集の情報が表に出る量が多い。だから、外から見ると「案件がたくさんある」ように見えます。

非SAPの領域は、ここが違います。ただし、案件が無いのと、案件の情報が表に出ていないのは別のことです。国内の会計・ERP製品は、導入も改修もずっと動いています。動いていないのは、その情報が独立した個人の目に触れる経路のほうです。

この差を「案件が少ない」と読むと、判断を間違えます。正しくは、探し方を変える必要があるです。

2. 誰が発注しているかが変わる

製品によって、案件が出てくる層が違います。ざっくり書くと、次の3つのどれかです。

発注元の層どういう形か独立した個人から見た入り方
ユーザー企業(導入する会社)が直接自社の担当者が足りない。業務側に近い仕事直接か、過去に関わった人からの紹介
導入を請け負う会社体制の一部として入る。工程が切られているその会社との継続的な関係
製品を売っている側に近い会社製品の知識が前提。範囲は製品に寄る製品の認定・登録の有無が効くことがある

**製品が変わると、この3つの比率が変わります。**SAPは2番目の層が厚い。製品によっては1番目や3番目が厚いこともあります。

ここは、自分の製品で実際にどの層から声がかかっているかを見ないと分かりません。次の章で測り方を書きます。

3. 「名指しのされ方」が変わる

SAPの領域では、人はモジュールの名前で呼ばれます。「FIの人」「MMの人」。この呼び方があるので、製品名+モジュール名だけで最低限の照合ができます。

非SAPの領域は、この共通の呼び名が弱いことがあります。そうすると、製品名を言っても相手が自分の穴と照合できません。

このとき効くのは、製品名ではなく業務の名前です。「固定資産の管理を、取得から除却まで」「原価計算の設計と、月次の締めの手順」。業務の名前は製品を越えて通じます。看板の立て方は後の章で書きます。

4. 保守・改修の仕事の比率が変わる

新規導入の案件が動いている時期と、すでに入っているものを直す仕事が中心の時期は、製品ごとに違います。

改修の仕事は、新規導入より期間が読みにくく、範囲が小さい傾向があります。これは悪いことばかりではありません。範囲が小さいということは、掛け持ちがしやすいということでもあります。稼働の埋め方としては、むしろ組み立てやすい形です。

ただ、**この比率が自分の領域でどうなっているかは、外から調べても出てきません。**自分で数えるしかない。

自分の領域の案件の出方を、1か月で測る

ここが、この記事でいちばん使える部分だと思います。

「自分の製品に案件があるか」を人に聞いても、答えは返ってきません。**当社にも他製品のデータはありません。**代わりに、自分で測る手順を書きます。1か月で終わります。

手順1:数える場所を3つ決める

出どころの違う場所を3つ選びます。1つでは偏ります。

  1. ユーザー企業が自分で出している募集(採用ページ、業務委託の募集)
  2. 導入を請け負う会社の、協力者の募集
  3. 過去に一緒に仕事をした人(ここは募集ではなく、直接聞く)

3つ目を外さないでください。非SAPの領域では、ここが最も情報が出てくる経路である可能性が高いと私は見ています(これは見立てで、数えた結果ではありません)。

手順2:同じ条件で数える

数えるときは、条件を固定します。バラバラに数えると比較になりません。

  • 期間:直近1か月
  • 対象:自分の製品名または自分の業務領域名が入っているもの
  • 記録するのは4つだけ:製品名/業務の範囲/期間/稼働の形(常駐かリモートか)

金額は書いてあれば記録しますが、無いほうが普通です。無いことを問題だと思わないでください。

手順3:4週間続けて、変化を見る

1回数えただけでは、多いか少ないかが判断できません。4週間、毎週同じ場所を見る。

見るのは総数ではなく、次の3つです。

  • 新しく出たものが毎週あるか(ゼロの週があるか)
  • 業務の範囲が、自分が持てる範囲と重なっているか
  • 稼働の形が、自分の受けられる形か

この3つが全部そろっていれば、その領域は独立が成り立つ側です。**総数が少なくても、成り立ちます。**独立に必要なのは市場の大きさではなく、自分が受けられる案件が、途切れずに出ているかだからです。

手順4:3つ目の経路を、実際に叩く

募集を数えるのと並行して、過去に一緒に仕事をした人に1人ずつ聞く。これが実質的にいちばん効きます。

聞き方は募集の有無ではありません。「いま、外の人に頼んでいる仕事はありますか」です。頼んでいる仕事があるなら、その形が自分の領域の案件の実態です。

人づてで案件が来る構造そのものは独立コンサルが案件を取るにはに書きました。

看板を、製品名で立てるか、業務名で立てるか

測り終わったら、看板を決めます。ここが非SAPの領域でいちばん判断が要る場所です。

製品名を先頭に置く場合

自分の製品名で、募集が毎週出ているなら、製品名を先頭に置いてください。相手が製品名で探しているからです。

この場合、書き方は「製品名+モジュール/機能+工程」になります。照合されやすい形です。

業務名を先頭に置く場合

製品名での募集が週によってゼロになるなら、製品名を先頭に置くと届きません。

このときは、業務の名前を先頭に置き、製品名を後ろに回します。

  • ×「Oracle EBSの導入経験10年」
  • ○「原価計算と月次の締めの設計(Oracle EBS/国産ERPでの導入経験)」

この書き方には、もう1つ効果があります。製品を移る案件に、自分が入れるようになることです。いま国内で起きている入れ替えの案件では、「前の製品も次の製品も分かる人」が足りません。業務名で立てておくと、この席に届きます。

両方を試すときの順番

迷ったら、**書類を2通り用意して、経路ごとに使い分けてください。**導入を請け負う会社には製品名の版、ユーザー企業と知人経由には業務名の版。1か月で反応の差が出ます。

非SAPの領域で独立するとき、やってはいけない3つ

1. SAPに乗り換えてから独立しようとする

これは、いちばん時間を失う手です。

SAPの案件情報が多く見えるので、「まずSAPを覚えてから」と考える人がいます。ただ、**未経験でSAPに入ると、入口は社員としての転職からになります。**独立までの距離がむしろ伸びます。SAPへ入る入口の話はSAPコンサルになるには、いま何本の入口があるかに整理してあります。

いま持っている製品で独立が成り立つかを、**先に測ってください。**測る前に乗り換えないこと。

2. 製品名を書かずに「ERPコンサル」とだけ名乗る

範囲を広く見せようとして、製品名も業務名も外してしまう人がいます。

これは照合できない書類になります。読む側は自分の穴と突き合わせているので、抽象的な言葉は読まれずに次に流れます。広く見せるのではなく、業務名で具体的に書いてください。

3. 最初の1件を、相場が分からないまま安く出す

他製品の単価の目安は、当社も持っていません。**分からないからといって、安い側に置かないでください。**一度出した値は、その人の相場として固定されます。

分からないときに使えるのは、自分の稼働から逆算するやり方です。考え方はコンサルの単価はどう決まるか独立して最初の1件を、いくらで出すかに書きました。製品別の相場ではなく、自分の側から積む形です。

まとめ

  • 製品が変わると案件の出方は変わるが、売っているものは変わらない
  • 動かないのは4つ。発注側が買っているのは操作ではないこと/売られる粒度/契約と精算の実務/一人で持てる範囲を言えるか
  • 動くのは4つ。案件の情報が表に出る量/発注している層の比率/名指しのされ方/保守・改修の比率
  • **「案件が無い」と「案件の情報が表に出ていない」は別のこと。**後者なら、探し方を変える話になる
  • 自分の領域は自分で測る。**3つの場所を、同じ条件で、4週間。**見るのは総数ではなく、毎週出ているか・範囲が重なるか・稼働の形が合うか
  • 3つ目の経路(過去に一緒に仕事をした人に直接聞く)を外さない
  • 看板は、製品名で募集が毎週出るなら製品名を先頭に。週によってゼロなら業務名を先頭にして製品名を後ろに回す
  • やってはいけないのは、測る前にSAPへ乗り換えること/「ERPコンサル」とだけ名乗ること/分からないまま安く出すこと

「SAPじゃないから」という理由で独立を止めている人に、私が言いたいのは1つだけです。**止める前に、1か月だけ数えてください。**数えてゼロなら、それは事実として受け取る価値がある情報です。数えずに止めるのは、事実ではなく印象で決めていることになります。

自分の範囲と稼働の形を先に整理しておきたい方は、30秒の独立準備度チェックから入ってみてください。登録は要りません。

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出典:製品が変わっても動かないもの・動くものの切り分けと、案件の出方を測る手順は、筆者がSAPの財務会計の導入を担当し、外部の人を受け入れる側にもいたときの観測にもとづく整理です。**他製品(Oracle、Dynamics、国産ERPなど)の案件を当社が受けた実績はなく、他製品の単価水準・案件数についての記述は本記事に含めていません。**発注元の層の3分類は、当社が2026年8月に需要側の会社を調べた社内記録(独立コンサルに発注が出る会社は、どんな会社かで公開)をもとに、製品の別に読み替えた見立てです。狙いキーワードの検索需要は、親キーワード「it コンサル フリーランス」を Google キーワードプランナーで計測したもので、当社の広告アカウントは検索広告を停止しているため実数ではなく範囲での取得です(KW実測 2026-08-10・帯:月間平均検索 100〜1000)。本記事の角度(SAP以外のERP)単独の検索数は、Google Search Console の実測で関連クエリ「erp フリーランス」が表示2・平均掲載順位32.0・クリック0(2026-09-08取得・直近28日)であり、需要の大きさは確認できていません。

※本記事は筆者の実務経験と当社の社内記録にもとづく整理です。契約や報酬の判断は個別の事情で結論が変わるため、実際の契約は専門家や契約の相手方にご確認ください。