独立して案件を受けるとき、その案件が自分のところに届くまでには、たいてい誰かが間に立っています。
発注元が直接来ることもあれば、元請けがいて、その下に自分がいることもある。どちらも「業務委託」と呼ばれます。
ただ、法律の側から見ると、間の立ち方には型があります。そして型ごとに、間に立つ側に要る許可が違う。ここを知らないまま契約すると、受ける側も巻き込まれます。
この記事は、条文の一般解説ではありません。当社が、自社について実際に調べた結果を書きます。調べた理由も、出てきた結論も、まだ決まっていないことも含めて、そのまま出します。
なぜ自社を調べることになったか
当社は、独立した方の登録と、需要側への配置を扱っています。そのための契約ひな形を作ったとき、冒頭にこういう留保が付きました。
締結前の必須確認:有料職業紹介事業の許可【要許可確認】
ひな形の条文は、雇用契約による採用を対象とする類型を選んだときだけ、職業安定法30条に基づく許可の保有を前提にする設計になっていました。そして次の項で「許可を保有しない場合、雇用関係のあっせんに該当する紹介は行わない」と受けている。
つまり設計としては正しいけれど、「では当社は持っているのか」が空欄のままでした。
空欄のまま運用に入る前に、確認しました。当たり前のことですが、当たり前が抜けるのはこういうところです。
結論──当社は有料職業紹介事業の許可を保有していない
調べ方は3層に分けました。
| 層 | 見たもの |
|---|---|
| 社内正本 | 許認可の棚卸し台帳(現状欄を実際に開いて確認) |
| 文書の全文 | 社内文書の本文を機械で走査し、当社名義の許可番号を探した |
| 会計・往復文書 | 許可申請に伴う実支出、労働局との往復文書、責任者講習の修了証 |
結果は次のとおりです。
- 許認可の棚卸し台帳の当該行は、現状欄が**「未取得」**(積極証拠)
- 当社名義の許可番号は、テキストとして読める文書の中に0件
- 許可申請に実際に支出した記録も、労働局との往復文書も、責任者講習の修了証も0件
有料職業紹介事業の許可には、職業紹介責任者の選任と、その責任者が受講済みであることが要件として要ります。修了証が存在しない状態で許可が下りていることはあり得ません。
したがって、当社は職業安定法30条1項の許可を保有していない。雇用関係の成立をあっせんする形の配置は行わないと決めています。
ここで正直に書いておきたいこと
この結論を出す過程で、走査は「無いことの証明」にならないということが実測で分かりました。
当社が現に保有している別の許可証(古物商)を、同じ抽出器にかけたところ、抽出できた文字数は0文字でした。スキャン画像のPDFだったからです。
つまり、職業紹介の許可証が同じ形で保管されていたら、この走査は100%見落とします。
だから当社の結論は「全部見て無いことを確認した」ではありません。正確には、社内記録に『未取得』という積極証拠があり、読める文書の中に反証が0件だった、です。
自分たちの調査の射程を書かずに「無い」と言い切るのは、調べていないのと大差ないと思っています。
4つの型と、要る許可
自社を調べた副産物として、間に立つ側から見た型の整理ができました。表にします。
| 型 | 中身 | 要る許認可 |
|---|---|---|
| 業務委託の直接受託 | 自社が受注し、自社の責任で役務を提供する | 不要 |
| 準委任の再委託 | 受注した事務の一部を、独立した方に再委託する | 不要 |
| 有料職業紹介 | 求人と求職の申込みを受け、雇用関係の成立をあっせんする | 職業安定法30条1項の許可 |
| 労働者派遣 | 自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令を受けて働かせる | 労働者派遣法5条1項の許可 |
| 労働者供給 | 供給契約に基づき、労働者を他人の指揮命令を受けて働かせる(派遣に当たるものを除く) | 禁止(職業安定法44条) |
職業紹介の定義は、職業安定法4条1項が明確に書いています。
この法律において「職業紹介」とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすることをいう。
**「雇用関係の成立」が定義の中心です。**成約が役務の提供にとどまり、雇用関係が成立しないなら、この定義の外に出ると整理し得ます。当社が準委任型を主系に置いているのは、この読みによります。
**ただし、これは確定した解釈ではありません。**実態が雇用に近い場合は評価が変わり得るところで、当社は弁護士確認事項として残しています。断定しません。
そして無許可で有料の職業紹介事業を行った場合、職業安定法64条1号により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。ここは条文上明確なので、ぼかしません。
実査でいちばん効いた発見──落ちる先は派遣ではなく供給
当社が調べていて、いちばん実務に効いたのはここでした。当初の理解が間違っていた部分です。
よく言われるのは「業務委託でも、指揮命令が発注者に移ると偽装請負になり、労働者派遣とみなされる恐れがある」という整理です。当社の台帳にも、そう書いてありました。
登録者を雇用していない事業者の場合、この表現は正確でない可能性があります。
労働者派遣の定義(労働者派遣法2条1号)を見てください。
労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい…
**「自己の雇用する労働者」が定義に入っています。**当社は登録された方を雇用していません。したがって、定義上そもそも労働者派遣に該当しない。
では、準委任の再委託で指揮命令が発注先へ移ったとき、何になるのか。労働者供給になり得ます。
職業安定法4条8項の定義です。
この法律において「労働者供給」とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣…に該当するものを含まないものとする。
**「派遣に該当するものを含まない」という書き方が効きます。**雇用していないから派遣にならない、その分だけ供給の側に落ちる構造になっている。
そして44条。
何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。
禁止です。「次条」=45条には許可制度があります。ただし内容がこうです。
労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。
主体が労働組合等に限られ、対象も無料の供給に限られる。株式会社が、手数料を得る前提で採れる制度ではありません。
ここから出てくる結論が、当社にとっていちばん重い1行でした。
派遣なら、許可を取れば適法にできる。供給は、後から適法化する道がない。
無許可の派遣も罰則は同じ水準です(派遣法59条2号)。**違いは「後から取れるか」です。**取れない側に落ちるなら、事前に線を引く以外に手当てがない。
だから当社は、準委任の再委託を主系に置いたうえで、指揮命令と勤怠の管理を当社に残すことを契約と運用の両方で固定しています。契約書に書くだけでは足りません。実態のほうが判断されるからです。
線引きそのものは、条文に書かれていない
正直に書きます。指揮命令がどこまで及ぶと供給に当たるのかは、条文に書かれていません。
当社はここを断定していません。弁護士確認事項として残しています。書かれていないものを、書かれているかのように整理するのが、この領域でいちばん危ないことだと思っています。
受ける側から見た、3つの確認
ここまでは配置する側の話です。受ける側から、自分に届いた案件がどの型かを見分ける方法を書きます。
自社を調べた結果として、確認すべき点は3つに絞れました。
**1. 自分は誰と契約しているか。**発注元と直接なのか、間に立つ会社と契約して、その会社が発注元と契約しているのか。二段になっているなら、準委任と請負の違いの判別を、二段のそれぞれについてやる必要があります。
**2. 誰が作業の順序と手段を決めるか。**日々の作業内容が発注先から直接指示され、勤怠も発注先が管理しているなら、契約書に何と書いてあっても、実態のほうで評価されます。これは偽装請負の論点そのものです。
3. 雇用の話が出てきていないか。「まずは業務委託で、うまくいったら社員に」という話は、雇用関係の成立に向かう話です。間に立つ側が職業安定法30条1項の許可を持っているかどうかが、ここで効いてきます。持っていないなら、その形の提案自体が成立しません。
3のケースに当たったとき、受ける側から確認する言い方はこれで足ります。
「この話が採用に進む場合、そちらは職業紹介の許可をお持ちですか」
答えられない相手と、その先を進める必要はありません。**当社に同じことを聞かれたら、「持っていません。だから雇用のあっせんは行いません」と答えます。**この記事は、その答えを先に置いておくためのものでもあります。
まだ決まっていないこと
自社を調べて、決着しなかったものも書いておきます。ここを書かないと、上の結論の強さを読者が判断できません。
- 走査の死角。本文が読めないスキャンPDF・画像・旧形式のファイルは中身を見ていません。スキャン画像で保管された書類は原理的に拾えません(実証済み)
- 走査範囲外。機密管理領域と個人領域は、本文を走査していません
- 会計システムの仕訳。文書のテキストにしか当たっていないため、言えるのは「文書には無い」までです
- 外部登録簿での反対証明。行政の公開サイトへ到達できず、外部からの確認は取れていません
- 職業紹介該当性の最終判断。成約が役務の提供にとどまる場合の整理は、当社の読みです
- 指揮命令の線引き。条文に書かれていません
当社は法律事務所ではありません。該当性の最終判断は弁護士によります。
ただし、無許可で有料の職業紹介事業を行うことが職業安定法30条1項に違反し、64条1号の罰則の対象になること自体は条文上明確です。ここはぼかしません。
まとめ
- 案件が届くまでの「間の立ち方」には法律上の型があり、型ごとに要る許可が違う。業務委託の直接受託と準委任の再委託は許可が不要、雇用関係の成立をあっせんする形は職業安定法30条1項の許可が要る。
- 当社は自社を実査し、有料職業紹介事業の許可を保有していないことを確認した。したがって雇用のあっせんに当たる配置は行わない。
- 実査の射程も公開する。走査は「無いことの証明」にならない。当社が現に持つ別の許可証がスキャン画像で、抽出文字数0だったことで実証された。
- いちばん重い発見は、登録者を雇用していない事業者の場合、指揮命令が移ったときに落ちる先は労働者派遣ではなく労働者供給になり得るという点。派遣法2条1号の定義が「自己の雇用する労働者」だから。
- **派遣は許可を取れば適法にできるが、供給は後から適法化できない。**職業安定法44条が禁止し、45条の許可は労働組合等の無料の供給に限られる。
- だから対策は事後の是正ではなく、事前に指揮命令と勤怠の管理を自社に残すこと。契約書と実態の両方で。
- 受ける側の確認は3つ。誰と契約しているか/誰が作業の順序と手段を決めるか/雇用の話が出ていないか。
- 3つ目に当たったら、間に立つ側に許可の有無を聞いてよい。答えられない相手と先へ進む必要はない。
自社を調べると、思っていたのと違う結論が出ます。当社の場合は「気をつけるべきは派遣とみなされることだ」と思っていたのが、そもそも派遣にはならず、落ちる先は後から直せないほうだった、という結論でした。
調べる前の理解のまま走らなくてよかったというのが、この件でいちばん正直な感想です。
関連記事:準委任と請負の違い/準委任契約とは/偽装請負とは/業務委託契約書、最低限みるべき場所/業務委託を途中で切られたら/フリーランス新法とは/下請法と取適法/業務委託で働くと社会保険はどうなるか/フリーランスのコンサルタントは何で食べているか
参考:職業安定法4条1項・4条8項・30条1項・44条・45条・64条/労働者派遣法2条1号・5条1項・59条2号(いずれもe-Gov法令検索で条文原文を確認)/当社の許認可棚卸し台帳および社内文書の全文走査(2026年8月実施)
※本記事は条文と当社が自社について行った実査に基づく整理です。職業紹介への該当性、指揮命令の線引き、労働者供給への該当性の最終判断は弁護士によります。個別の事案については専門家にご確認ください。