会社員のときは、確定申告なんて他人事でした。年末調整の紙を書いて出せば、あとは会社が全部やってくれる。ところが業務委託で働き始めた瞬間、その「会社がやってくれていた面倒」が、まるごと自分の仕事になります。私も独立した最初の年は、何から手をつければいいのか分からず、順番をずいぶん間違えました。この記事では、業務委託で働く人の確定申告を、私自身がつまずいた順番で整理します。制度や税率は変わるので、最終的な申告は必ず税理士か国税庁の情報で確認してください。
業務委託の収入は「給与」ではなく「事業所得」
まず前提を揃えます。会社員の給料は給与所得ですが、業務委託で受け取る報酬は、原則として事業所得(人によっては雑所得)という別の区分になります。これが確定申告のすべての出発点です。
給与は会社が税金を計算して天引きしてくれますが、事業所得は自分で「売上−経費=利益」を計算し、そこにかかる税金を自分で申告して納めます。つまり、いくら経費を積み上げて利益を正しく圧縮できるかが、そのまま手取りに響いてくる。会社員時代にはなかった「経費」という考え方が、ここで初めて自分ごとになります。
最初にやるのは開業届と青色申告の申請
独立して収入の柱が業務委託になったら、税務署に開業届を出します。あわせて出しておきたいのが、青色申告承認申請書です。この二枚を出すかどうかで、翌年の税金がはっきり変わります。
青色申告を選ぶと、きちんと帳簿をつけることを条件に、最大65万円を利益から差し引ける青色申告特別控除が使えます(電子申告や電子帳簿保存などの要件あり)。65万円の控除は、税率次第で十数万円の節税に相当します。申請には期限があり、出し遅れるとその年は白色申告になってしまうので、独立したら早めに出しておくのが鉄則です。私はこの申請の存在を知るのが遅れて、初年度に取りこぼした苦い記憶があります。
源泉徴収されているなら、申告で精算される
業務委託でよくあるのが、報酬から源泉徴収税があらかじめ引かれて振り込まれるケースです。デザインや原稿、一部のコンサルティングなどで、報酬の10.21%が先に天引きされていることがあります。
ここで大事なのは、この源泉徴収は「前払いした税金」だということ。確定申告で一年分の利益と本来の税額を計算し、すでに前払いした分と精算します。経費をきちんと計上して利益が思ったより小さければ、前払いしすぎた税金が戻ってくる(還付)こともあります。逆に、天引きされているからと安心して申告をしないと、精算されないまま損をする。源泉徴収された報酬がある人ほど、申告する意味は大きいと考えてください。
経費は「事業のために使ったか」で線を引く
経費でいちばん迷うのが、どこまで入れていいのかという線引きです。原則はシンプルで、その支出が事業のために必要だったかどうか。仕事で使うパソコン、通信費、打ち合わせの交通費、事業に関する書籍や勉強代などは経費になります。
自宅で仕事をしているなら、家賃や電気代のうち仕事で使っている割合を「家事按分」して経費にできます。ここで無理をして生活費まで経費に混ぜ込むと、あとで説明できず苦しくなる。私は「税務署の人に聞かれて、事業のためと胸を張って言えるか」を自分の基準にしています。帳簿づけは会計ソフトを使えば驚くほど楽になります。私自身も日々の記帳はクラウド会計に任せていて、独立初期こそ手を動かして仕組みを理解する価値があると感じています。
独立初年度に効いてくる住民税と国保の落とし穴
最後に、確定申告そのものより人を驚かせる落とし穴を書いておきます。それは、住民税と国民健康保険料です。
住民税は前年の所得をもとに、翌年に請求が来ます。独立して所得が増えた翌年、想像より高い住民税の通知が届いて青ざめる人は本当に多い。国民健康保険料も前年の所得で決まるため、同じように後からずしりと効いてきます。さらに、一定以上の所得になると所得税の予定納税といって、来年分の税金を前払いする仕組みも始まる。確定申告で今年の税金を払い終えても、その後に住民税・国保・予定納税が続く。だからこそ、利益が出たお金をすべて使ってしまわず、税金と保険料の分をあらかじめよけておくことが、独立一年目の生き残りに直結します。
まとめ:最初の一年は自分で通すと、仕組みが腹落ちする
業務委託の確定申告は、開業届と青色申告の申請から始まり、源泉徴収の精算、経費の線引き、そして翌年の住民税・国保への備えまでが一続きの流れです。最初は面倒に感じますが、一度自分で通してみると、お金の流れが腹の底で分かるようになります。
事業が回り始めて記帳の手間が重くなってきたら、税理士に任せる判断をすればいい。ただ、最初の一年だけは自分で手を動かしてみることを、私はおすすめします。自分の事業の数字を自分で理解している経営者は、その後の値づけも投資も、判断がぶれません。具体的な申告のやり方や自分の場合の有利不利は、必ず税理士か国税庁の情報で確認してください。