独立して最初の契約を詰めていくと、単価より先に決めきれない項目が出てきます。稼働日数です。
週3で受けるのか、週5で入るのか。相手から「週何日いけますか」と聞かれて、その場で答えられずに持ち帰った人は多いと思います。私も独立した最初の年、ここをきちんと考えずに答えて、後から窮屈になりました。
この記事は、稼働日数だけを扱います。単価の決め方はコンサル単価の決め方に、契約書の読み方は業務委託契約書で見るところに別に書いているので、そちらと合わせて読んでください。
稼働日数は「働ける日数」ではなく「契約の単位」
最初に、考え方の置き場所を変えます。
週3か週5かを、自分が何日働けるかで決めようとすると答えが出ません。独立した直後は、たいてい全部の日が空いているからです。空いているから週5、と決めてしまうと、後で身動きが取れなくなります。
稼働日数は、その契約が自分の1週間のどれだけを占めるかを決める線引きです。占有率と言い換えてもいい。日数を決めるというのは、残りの日をどう使うかを同時に決めるということです。
稼働日数は「いくら働くか」ではなく「何日を自分の手元に残すか」の決定。残す日の使い道が決まっていない週3は、ただの週5未満になる。
日数によって、実際に何が変わるか
週3・週4・週5で、変わるものを4つに分けて並べます。
| 週3 | 週4 | 週5 | |
|---|---|---|---|
| 収入 | 少ない。ただし2社目を足せる | 中間。足すには余白が薄い | 1社で完結する |
| 案件の選択肢 | 狭い。日数固定の募集が多い | 中くらい | いちばん広い |
| 現場での立ち位置 | 外部の専門家として扱われやすい | 曖昧になりやすい | 内部の一員に近づく |
| 空いた日 | 2日。営業・仕込みに使える | 1日。実質は予備日 | なし |
補足します。
収入は日数に比例しません。 週3を2つ足せば週6になりますが、そこには移動と切り替えの時間が乗ります。会議が両方に入れば、実際の負荷は週6より重くなる。掛け持ちの現実はコンサルの掛け持ちに書きました。
案件の選択肢は、週5がいちばん広い。 これは事実として認めておいたほうがいいと思います。発注する側から見ると、週5で入れる人のほうが体制を組みやすい。週3を選ぶというのは、選択肢を狭める代わりに何かを取りに行く判断です。
立ち位置は、意外と日数で決まります。 週5で入ると、社内の会議にも呼ばれ、意思決定の流れの中に入っていきます。良い面もありますが、外部の専門家として意見を言う立場からは離れていく。週3のほうが、距離を保ちやすい。
契約書で、稼働はどう書かれるか
ここが実務でいちばん事故が起きるところです。契約書の中で、稼働は3つのうちどれかの書き方になります。
- 人日で書く:「月◯人日」。日単位で数える。いちばん分かりやすい
- 時間で書く:「月◯時間〜◯時間」。精算幅(下限と上限)とセットで使われる
- 稼働率で書く:「稼働率60%」。何を100%とするかの定義が必要
問題は、「週3」という言葉が契約書に書かれないことがある点です。口頭では週3で合意しているのに、契約書には「月120時間」とだけ書いてある。この場合、月の営業日が多い月は週3で足りず、少ない月は余る。
確認しておくのは、この4つです。
- 単位は何か。 日か、時間か、稼働率か
- 下限と上限はあるか。 「140〜180時間」のような幅が付いているか。付いていれば、超過と不足のときの扱いも書かれているはず
- 超えたとき・足りないときどうなるか。 超過分は追加で支払われるのか、飲み込みなのか。ここが空白だと、実質は上限なしになります
- 稼働日は固定か、その都度か。 「月水金」と決まっているのか、月内で調整できるのか
準委任と請負では、そもそも数え方の考え方が変わります。違いは準委任契約とはと準委任と請負の違いにまとめました。契約書の雛形が相手から出てきたときの読み方は相手の雛形が自分の前提とぶつかったときに書いています。
「週3契約なのに週5の期待をされる」はなぜ起きるか
独立して最初の1年で、いちばん多い事故がこれだと思います。原因は、相手が悪いからではありません。契約の日数と、業務の切れ目が一致していないからです。
具体的には、この3つで起きます。
1つ目は、会議が非稼働日に入ること。 定例が火曜にあるのに、稼働日が月水金だと、毎週どこかで無理が出ます。日数を決めるときは、先方の定例の曜日を先に聞く。これだけで大半は防げます。
2つ目は、連絡が稼働日と関係なく来ること。 チャットは曜日を選びません。「非稼働日は原則返信しない」と最初に一度だけ言っておくかどうかで、3か月後の状態がまるで違います。言いにくければ、稼働日をプロフィールや署名に書いておくだけでもいい。
3つ目は、成果物の締切が日数を無視すること。 週3で受けているのに、週5前提のスケジュールで工程が引かれている。これは日数の問題ではなく計画の問題なので、気づいた時点で工程表の側を直してもらう必要があります。ここを黙って自分の土日で埋めると、その埋め方が前提になります。
週3を守るのは、断ることではなく、最初に「見える形」にしておくこと。稼働日・定例の曜日・返信の範囲。この3つを紙に書けば、ほとんどの摩擦は起きない。
フルリモートの契約だと、この境界はさらに曖昧になります。距離の取り方はフルリモートの業務委託にも書きました。
決め方の手順
では、どう決めるか。順番があります。
手順1|生活が回る最低ラインを、日数で出す。 月にいくら必要かを先に決めて、それを自分の単価で割ると、必要な日数が出ます。ここで出る数字が、交渉の下限です。この計算をしていない人は、日数の話が来たときに感覚で答えることになります。
手順2|残す日に、置くものを決める。 週3にするなら、空く2日に何を置くのかを先に決める。営業なのか、次の専門性の仕込みなのか、2社目の枠なのか。ここが空白のまま週3を選ぶと、3か月後にただ収入が少ないだけの状態になります。空いた日の使い方は稼働に空きが出たときに別立てで書きました。
手順3|先方の定例と締めの日を聞く。 定例の曜日、月次の締めの週、リリースやテストの山。この3つを聞いてから稼働日を置くと、後の摩擦が激減します。聞くのは失礼ではなく、むしろ準備している人に見えます。
手順4|最初は少なめに決めて、上げる余地を残す。 これが実務的にいちばん効きます。週4で受けて後から週5に増やすのは簡単ですが、週5で受けて後から週3に減らすのは難しい。相手の体制がもう週5で組まれているからです。迷ったら、少ないほうから入る。
後から変えるときの、言い方
日数は、途中で変えられます。ただし、切り出す時期と言い方で通り方が変わります。
増やすとき
増やす方向は、たいてい通ります。相手にとっては体制が厚くなる話だからです。ただ、予算は年度や期で組まれているので、期の切れ目の1〜2か月前に出すのが現実的です。
言い方は、日数からではなく仕事の中身から入ります。
「いま週3で見ている範囲だと、◯◯の部分が翌週送りになっています。ここを詰めるなら、もう1日いただけると流れが変わると思うのですが、いかがでしょうか」
日数が足りないという主張ではなく、日数を足すと何が良くなるかの提案にする。これだけで受け取られ方が変わります。
減らすとき
こちらは難しい。相手の体制を崩す話だからです。守るべき順番があります。
- 更新のタイミングで出す。 契約期間の途中で減らすと、相手は代わりを探す時間が取れません。更新月の2か月前が目安です
- 理由を、他社の名前で言わない。 「別の案件が入ったので」は、相手を後回しにしたと聞こえます。言うなら「自分の受け方を見直していて」まで
- 引き継ぎの形を、自分から出す。 減らす分をどう埋めるかの案を持っていくと、話は交渉ではなく相談になります
- 一度に減らさない。 週5から週3ではなく、まず週4。段階を踏むと、相手も体制を組み直せます
減らす相談を、更新されない話と混同しないでください。更新されない側の話は業務委託が更新されないときに書いています。
言ってはいけない言い方
- 「忙しいので減らしたい」:相手には、自分の案件の優先度が下がったとしか聞こえません
- 「単価が上がるなら日数を減らせます」:日数と単価を同じ交渉の卓に乗せると、両方こじれます。分けて話す
- 「来月から週3にします」:決定の通知は、相談の余地を消します。相談の形で出す
単価そのものの交渉は日数と切り離して、単価交渉の進め方の順番でやったほうが通ります。
週3を選ぶなら、空いた2日をどう使うか
最後に、これだけは書いておきます。週3を選ぶ人の多くが、空いた2日を予備日にしてしまいます。何かあったときのために空けておく、という使い方です。
それだと、日数を減らした意味がほとんど残りません。私が見てきた中で、週3が機能している人は、空いた日に置くものが決まっています。
- 次の案件の入口を作る日:発信、過去の関係先への連絡、書類の整備
- 専門性を1段深める日:新しい領域の学習、資格、検証環境での試行
- 2社目の枠として空けている日:ただし、埋まるまでは1つ目に食われないよう境界を明示する
逆に言うと、置くものが決まっていないなら、最初は週5で受けて、案件の中身で信用を作ってから減らすほうが早いこともあります。順番はどちらでもいい。決めていないことが問題です。
独立の初期に何を揃えておくべきかは独立の前提条件に、業務委託という契約の形そのものは業務委託でコンサルをするということにまとめました。
まとめ
- 稼働日数は「働ける日数」ではなく、1週間の何日を手元に残すかの決定
- 週3・週4・週5で変わるのは、収入だけでなく案件の選択肢と、現場での立ち位置
- 契約書では稼働が人日・時間・稼働率のどれかで書かれる。下限上限と、超過・不足の扱いを必ず確認する
- 「週3なのに週5の期待」は、定例の曜日・連絡の範囲・工程の前提の3つを最初に固めれば大半が防げる
- 決め方は4手順。必要日数を計算する → 残す日の使い道を決める → 先方の定例と締めを聞く → 少なめから入る
- 増やすのは簡単、減らすのは難しい。だから迷ったら少ないほうから
- 減らすときは更新の2か月前・理由は他社名で言わない・引き継ぎ案を自分から出す・段階的に
- 空いた日に置くものが決まっていない週3は、ただの週5未満になる
日数は、後から変えられます。ただ、変える前提で最初の線を引いておくかどうかで、変えられる幅が違ってくる。最初の1件だからこそ、少なめに、そして紙に書いて始めることをおすすめします。
自分の場合はどこから始めるのがいいか整理したい人は、独立支援の入口も見てみてください。