独立した最初の年、私は白色申告で確定申告をしました。「フリーランスなら青色一択」という記事をさんざん読んだあとで、それでも白色を選んだ。理由は単純で、開業から間に合う期限に、青色申告の承認申請を出しそびれたからです。
結論から言うと、その年は白色で何も困りませんでした。ただ、翌年は白色のままにしてしまって、明確に損をした。この記事は「白色は悪、青色は正義」という単純な話ではなく、白色で十分な年と、青色に切り替えるべき年は、その人の状況で決まるという話を、自分の実体験で書きます。私は税理士ではないので、最終的な判断の前に確定申告の全体像も踏まえつつ、国税庁の公式情報で必ず確認してください。
白色申告とは、そもそも何か
確定申告には、大きく分けて白色申告と青色申告の二つがあります。青色申告は事前に税務署へ「承認申請」を出しておく必要があり、その代わりに税制上の優遇がつく。白色申告は、その申請をしていない人の申告方法、という位置づけです。
昔の白色申告は「帳簿をつけなくていい代わりに優遇もない」という整理でしたが、今は違います。白色でも、収入と経費を日々記録する帳簿の作成・保存が義務になっています。ここを「白色は楽」と誤解していると、税務調査で慌てることになる。
つまり今の実態は、**「帳簿の手間はそこまで変わらないのに、優遇だけ受け取れないのが白色」**に近い。だからこそ「青色にしないと損」と言われるわけです。
青色との差は、控除65万円だけではない
白色と青色の違いを「65万円の特別控除があるかないか」だけで語る記事が多いですが、実務で効くのはそこだけではありません。私が翌年に損をしたのも、控除以外の差でした。
- 青色申告特別控除:正しく複式簿記で記帳し、電子申告などの要件を満たすと、所得から最大65万円を差し引ける。所得税と住民税、さらに国民健康保険料の計算のもとになる所得が下がるので、効き目は控除額の数字以上です。この波及は節税の考え方でも触れました。
- 赤字の繰り越し:青色なら、その年の赤字を翌年以降(最長3年)の黒字と相殺できる。独立初年度に初期投資で赤字になりやすい人ほど、ここが大きい。白色にはこの繰り越しがありません。 私が損をしたのは、まさにこれでした。
- 家族への給与:生計を同じくする家族に払った給与を、青色なら「専従者給与」として要件のもとで経費にできる。白色にも専従者控除の枠はありますが、金額の上限が固定で、青色ほど自由が利きません。
控除65万円は目立つ入口にすぎず、赤字繰り越しと家族給与の差が、年によっては控除以上に効く。これを知らずに白色を続けたのが、私の反省点です。
白色申告のやり方──手順はこれだけ
やること自体は、身構えるほど多くありません。
- 日々、取引を記録する。 いつ・いくら・何のために、を売上と経費で分けて残す。単式(お小遣い帳に近い形)で足ります。記録の実務は会計ソフトの選び方で楽になります。
- 領収書・請求書を保存する。 どこまでが経費かの線引きは経費はどこまで認められるかを目安に。
- 年明けに「収支内訳書」を作る。 白色は青色の決算書ではなく、この収支内訳書を使います。1年分の売上と経費を項目ごとに集計するだけ。
- 確定申告書に転記し、2〜3月の申告期間に提出する。 e-Taxでも紙でも可。所得税を納める、または還付を受ける。
複式簿記が要らないぶん、初めての年でも一人で完結できます。**「とりあえず一年目は白色で回して、翌年から青色に上げる」**という進め方は、実は現実的な選択肢です。
白色で十分な年と、青色に切り替えるべき年
私の失敗を一般化すると、判断の分かれ目はこうなります。
白色で十分な年
- 事業を始めたばかりで、売上も経費もまだ小さい。
- 副業の延長で、所得が年20万円前後にとどまる見込み。
- 青色申告の承認申請の期限に間に合わなかった(=その年はもう白色でいくしかない)。
青色に切り替えるべき年
- 所得が増えてきて、65万円控除の節税効果が記帳の手間を明らかに上回る。
- 初期投資で赤字が出る見込みがあり、翌年以降に繰り越したい。
- 家族に手伝ってもらい、給与を払っている。
大事なのは、青色は「切り替えたい年の始まる前」に承認申請を出しておく必要があるという一点です。原則としてその年の3月15日まで、開業したての人は開業日から2か月以内。思い立った年の分から青色にはできない。 私が一年損をしたのは、この期限を「来年でいいか」と後回しにしたからでした。開業まわりの期限は開業届の出し方と合わせて、独立したその月のうちに片付けておくのが安全です。
私が今、独立初年度の自分に言うなら
「一年目を白色で回すのは、間違いじゃない。ただし二年目を白色のまま惰性で迎えるな」。これに尽きます。白色は、青色への助走として使うぶんには悪くない。問題は、切り替えのタイミングを能動的に決めないと、控除も赤字繰り越しも取りこぼしたまま時間だけが過ぎることです。
白色でいくにせよ青色に上げるにせよ、帳簿を日々つける習慣だけは今日から始めてください。そこさえ動いていれば、どちらの申告にも後から乗れます。税額や要件の最終確認は、国税庁のサイトか、一度だけでも税理士に相談してから決めるのが確実です。