独立して最初の確定申告で、車を「全額経費」で入れようとして手が止まりました。
平日は客先へ、週末は家族と買い物にも使っている。この1台を、どの顔で経費に入れるのか。事業のためだけの車ではないという当たり前の事実の前で、私は数字を打ち込めなくなりました。
この記事は「車は経費になる」で終わらせず、どこまで・どうやって落とすのかを、按分・減価償却・周辺費用の3点で書きます。
大前提:兼用なら「全額」は落とせない
事業とプライベートの両方に使う車は、事業で使った割合の分だけが経費です。この割合を出す作業を家事按分と呼びます。
按分の物差しは主に2つです。
- 走行距離:1年の総走行距離のうち、事業の移動が占める割合
- 使用日数:週や月のうち、事業で使った日数の割合
どちらでも構いませんが、一度決めた基準は使い続けるのが基本です。私は走行距離にしました。ドライブレコーダーとメモで「客先まで往復◯km」を積み上げ、年末に事業分をざっくり集計する。厳密でなくていい、が、説明できる根拠がある状態にしておくのが肝です。按分の考え方全般は家事按分に詳しくまとめました。
事業専用車として登録し、私用に一切使わないなら100%も理屈上ありえます。ただ独立初期の1台持ちで、それを税務署に通すのはかなり難しい。現実的には7割・5割といった数字で線を引くことになります。
車両本体は「一度に」ではなく「数年に分けて」
いちばん誤解しやすいのがここです。買った年に車両代を全額経費にはできません。
車は使うほど価値が減っていく資産なので、取得費を耐用年数にわたって少しずつ経費にしていきます。これが減価償却です。国が定めた法定耐用年数は、新車なら普通自動車で6年、軽自動車で4年。たとえば新車の普通車を買えば、ざっくり6年に分けて経費化していくイメージです。
ここに按分がかぶさります。**「1年分の減価償却費 × 事業使用割合」**が、その年に落とせる金額になります。計算の型そのものは減価償却に整理したので、車もこの器に乗せて考えてください。
中古車の耐用年数が短くなる仕組み
よく聞く「中古車のほうが有利」という話には、ちゃんと根拠があります。
中古車は経過した分だけ耐用年数を縮められます。目安の計算は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」で、端数は切り捨て、最短は2年。この式でいくと、普通車は4年落ちあたりで耐用年数が2年まで縮みます。同じ金額でも短い年数で償却できる=1年あたりの経費が大きくなるわけです。
ただしこれは「節税テクニック」として車を買う話ではありません。必要な車を買うなら中古の年式も選択肢に入る、という順番で考えるべきです。使いもしない車を経費のために買えば、出ていく現金のほうがずっと大きい。
周辺費用は、まとめて按分できる
車そのものだけでなく、維持にかかる費用も同じ割合で経費に入れられます。
- ガソリン代
- 駐車場代(月極・コインパーキング)
- 自動車保険(任意・自賠責)
- 車検・点検・修理代
- 自動車税
- 高速道路の通行料
これらも原則は事業使用割合をかけた分が経費です。高速代のように「その日は完全に仕事」とはっきり切り分けられるものは、実費をそのまま入れて構いません。レシートや明細は日付ごとに残しておくと、あとで按分するときに楽になります。何がどこまで経費になるかの全体像は経費はどこまでを見てください。
ローンとリースで、落ちる場所が変わる
支払い方でも扱いが分かれます。
ローンで購入した場合、毎月の返済のうち元本部分は経費になりません(資産の分割払いにすぎないため)。経費になるのは利息部分と、車両の減価償却費です。ここを取り違えると、返済額をまるごと経費に入れてしまう事故が起きます。
リースなら、毎月のリース料を事業使用割合で按分して経費にします。減価償却の計算がいらないぶん帳簿はシンプルです。所有にこだわらないなら、経理の手間で選ぶのも一つの判断です。
税務調査で効くのは、後から作れない記録
最後に、いちばん地味で、いちばん効く話をします。
按分割合は自己申告です。だからこそ、「なぜその割合なのか」を後から示せるかで強さが変わります。私が今やっているのは、これだけです。
- 事業の移動を、日付と行き先と距離でメモに残す
- ガソリン・駐車場のレシートを月ごとにまとめる
- 保険証券や車検の書類を1か所に置く
派手なことは何もしていません。ただ、割合を聞かれたときに「この記録から出しました」と言える。それだけで、按分は交渉ではなく説明になります。帳簿づけを会計ソフトに寄せておくと、この記録と数字が地続きになって、確定申告の直前に慌てずに済みます。
最初の申告で手が止まったのは、正解が一つに決まらなかったからでした。車の経費は、**「全額か、ゼロか」ではなく「何割を、どう説明するか」**の話です。
線を引くのは自分。ただ、その線に根拠を持たせることはできます。
※本記事は2026年7月時点の一般的な税務の考え方を、独立した個人の実務目線で整理したものです。耐用年数や按分の妥当性は個別の使用実態によって変わります。実際の申告では国税庁の情報や税務署・税理士など専門家にご確認ください。