独立して最初に「入れておいてよかった」と思った道具が、会計ソフトでした。私は経理からSAPの導入に進んだ人間なので、帳簿は手でも付けられます。それでも、日々の入力から確定申告まで一本でつながるソフトの効率は別格でした。逆に、独立初年度に会計ソフト選びで迷って手が止まる人も多い。この記事では、代表的なfreee会計・マネーフォワードクラウド・弥生の三つを、実務で見るべき点にしぼって比べます。料金や機能は改定されるので、決める前に各社の公式サイトで最新を確認してください。
なぜ会計ソフトを入れるのか
理由は三つです。ひとつは、日々の取引を記録し続けられること。銀行口座やクレジットカードを連携させれば、明細が自動で取り込まれ、仕訳の候補まで出ます。手入力より速く、抜け漏れも減ります。
ふたつめは、青色申告に必要な帳簿と決算書が、そのまま作れること。65万円(または55万円)の控除を受けるには複式簿記での記帳と貸借対照表が要りますが、ソフトを使えば入力の延長で出来上がります。みっつめは、確定申告書の作成・提出まで地続きなこと。e-Taxとの連携で、家から申告まで済ませられます。
主要3ソフトの性格の違い
三つは「思想」が違います。ここを外すと、多機能でも自分に合わないソフトを選んでしまいます。
freee会計は、簿記を知らない人でも進められるように作られています。「借方・貸方」といった簿記用語を前面に出さず、質問に答える形や、取引を選ぶ形で記帳が進む独自の設計です。会計の言葉に不慣れな人ほど、とっつきやすい。
マネーフォワードクラウドは、簿記の型を残したまま自動化を効かせる作りで、連携できるサービスの幅が広いのが持ち味です。仕訳の考え方がある程度わかる人には、素直で速い。請求書や給与など、周辺の業務サービスと束ねて使える点も、事業が広がる人には効きます。
弥生(やよいの青色申告オンライン)は、会計ソフトの老舗で、サポートの手厚さと初年度の無料期間が特徴です。電話や画面共有で人に聞ける安心感を重視するなら、有力な選択肢になります。
選ぶときに見る4つの軸
比較で迷ったら、次の四つで見ると絞れます。
第一に、簿記の知識がどれだけあるか。用語に不安があるならfreee寄り、仕訳が分かるならマネーフォワードや弥生も快適です。第二に、連携したい口座・カード・サービスの数。使っている金融機関やサービスに対応しているかを、必ず事前に確かめてください。第三に、料金と使う機能のバランス。第四に、困ったときに人に聞けるサポートを重視するかどうか。この四つに自分の状況を当てはめれば、おのずと候補は二つ程度に絞れます。
簿記がわからない人はどれがいいか
「簿記はまったく分からないが、青色申告はしたい」という人が一番多い相談です。この層には、用語を極力見せずに進められるfreeeが合いやすい。ただし、独自の操作に慣れる必要はあります。
一方で、これを機に簿記の考え方も少し身につけたいなら、仕訳の形が見えるマネーフォワードや弥生のほうが、あとで数字を読む力につながります。会計ソフトは「作業を消す道具」であると同時に、「自分の事業の数字を見る窓」でもあります。楽さだけでなく、数字と向き合える度合いも一つの基準にしてください。
料金と、無料で済ませられないか
各社に無料プランや無料期間がありますが、無料の範囲は年々変わり、取引件数や機能に制限が付くのが一般的です。取引が少ない初年度は無料でしのげることもありますが、青色申告に必要な機能やサポートを使うなら、有料プランが現実的になる場面が多い。
年間で数千円から一万円台の費用は、確定申告にかかる時間と精神的な負担を思えば、私は十分に元が取れる投資だと考えています。ここは各社の料金ページで、自分の使う機能に必要なプランを確かめてから決めてください。
乗り換えと、最初の設定でつまずかないために
最初に少し手間なのが初期設定です。銀行・カードの連携登録、事業用と私用の口座の切り分け、勘定科目の初期設定。ここを丁寧にやっておくと、あとが本当に楽になります。逆に、私用の支払いを混ぜたまま走ると、期末に切り分ける作業でつまずきます。
いったん一年使ったソフトから乗り換えるのは、データ移行の手間があり、正直おすすめしません。だからこそ、最初の一つを選ぶときに、この記事の四つの軸で自分に合うものを選んでおく。会計ソフトは長く付き合う道具です。流行や価格だけで飛びつかず、使い方に合わせて選んでください。