独立して1年くらい経つと、質問の中身が変わります。

最初は「どうやって案件を取るか」でした。それがある時期から「この案件、そもそもどこから来た話なんだろう」に変わる。同じくらいの仕事なのに、単価が倍近く違うことに気づくからです。

私の実感では、フリーのコンサルに来る案件は、経路で見ると3つしかありません。**紹介、直、常駐枠。**この3つは、単価の決まり方が根本的に違います。腕の差ではなく、経路の差で金額が動いている。

この記事は、案件をどう取るかの話ではありません(それは独立コンサルの案件の取り方に書きました)。目の前に来た話が3経路のどれなのかを見分けて、単価のどこが交渉できてどこが動かないのかを判断するための記事です。

経路①|紹介から来る案件

前職の同僚、昔のクライアント、一度仕事をした相手。「知り合いに、こういうことができる人はいないか」と聞かれた誰かが、あなたの名前を出す。

私の場合、独立してからの案件は、たどるとほとんどここに行き着きます。

単価がどう決まるか:紹介した人の記憶で、おおよその水準が決まります。あなたが会社にいた頃どのポジションだったかを、紹介者が覚えている。**その記憶が、話が始まる前に価格帯を決めてしまう。**だから、紹介経由の単価は「あなたが何をやってきたか」より「紹介者が何を覚えているか」に引っ張られます。

交渉できる部分:意外に大きい。相手はあなたを探して見つけたのではなく、紹介で知った状態なので、**まだ相場観を持っていません。**根拠を出せば、その根拠が基準になります。

交渉できない部分:紹介者の顔です。相場より高い数字を出すことはできますが、話が壊れたときに困るのは紹介者なので、決裂させにくい。ここが紹介経路の唯一の弱点です。

次に繋がるか:いちばん繋がります。紹介で入った仕事をきちんと締めると、そこからまた紹介が出る。

経路②|発注元と直で契約する案件

発注する会社と、あなたが直接契約する形です。問い合わせフォームから連絡が来る、記事を読んだ人が声をかけてくる、自分から打診して話が始まる。

単価がどう決まるか:発注元の社内予算です。相場ではありません。**「この課題を外に出すのに、いくらまで出せるか」という枠が先にあって、その中に収まるかどうか。**だから、同じ仕事でも会社によって出せる額が違います。

交渉できる部分:範囲です。金額そのものより、「その金額で、どこまでやるか」を動かすほうが早い。予算が動かないなら、成果物を減らす。これは値下げではなく、単価を守るための調整です。

交渉できない部分:予算の上限。役員決裁が終わったあとの数字は、たいてい動きません。だから予算が固まる前に会話に入れているかどうかが、この経路では全部です。

次に繋がるか:繋がりますが、時間がかかります。会社の予算サイクルに乗るので、次の話は次の期になることが多い。

直での打診がどれくらい返ってくるかは、自分で打診したときの反応に、私が実際に送った件数と結果をそのまま書きました。

経路③|他社が持っている枠に、常駐で入る案件

3つ目が、すでに発注が決まっているプロジェクトの席に、あなたが入る形です。元請の会社が発注元と契約していて、あなたはその会社と業務委託契約を結ぶ。

単価がどう決まるか:ここがいちばん分かりやすい。**発注元が払っている額から、間に立つ会社の取り分を引いた残りです。**あなたの腕で決まっているわけではありません。ポジションに値札が貼ってあって、そこに誰が座るかという話です。

交渉できる部分:ほとんどありません。**枠の額は、あなたが呼ばれる前に決まっています。**動かせるとしたら、契約更新のタイミングで、担当範囲が広がったことを根拠にする場合くらいです。

交渉できない部分:構造そのもの。何段か経由していると、発注元が払っている額とあなたの受取額の差は開きます。これは誰かが悪意でやっているのではなく、間に立つ会社もリスクを持っているからです。ただ、その構造の中にいることは自覚しておいたほうがいい。

次に繋がるか:繋がり方が特殊です。**現場での評判は残りますが、契約上のあなたの相手は元請の会社なので、発注元と直接の関係は作りにくい。**プロジェクトが終わると、縁も切れやすい。

3経路を並べると、何が違うか

①紹介②直③常駐枠
単価を決めているもの紹介者の記憶発注元の予算枠の値札(残り)
交渉の余地大きい範囲なら動くほぼ無い
決まるまでの速さ速い遅い速い
稼働の拘束案件による案件による重い
次に繋がるかいちばん繋がる期をまたぐ切れやすい

この表でいちばん大事なのは「単価を決めているもの」の行です。

独立して最初のころ、私は自分の単価が低いのは腕のせいだと思っていました。違いました。③の経路ばかりで受けていたからです。腕を上げても、枠の値札は変わらない。単価を上げたければ、腕より先に経路を変える必要があった。

単価そのものの水準はコンサルの単価相場に、上げ方はコンサルの単価を上げるに分けて書いています。

経路が違えば、危ないポイントも違う

3経路は、切られ方も違います。

  • ①紹介:切られることは少ない。ただし紹介者との関係が壊れると、一緒に消えます
  • ②直:予算が消えると終わります。会社の業績や体制変更で、こちらに落ち度がなくても止まる
  • ③常駐枠:いちばん急に終わります。プロジェクトの縮小で席が減れば、順番に外れる

③で契約を切られたときの動き方は業務委託を途中で切られたらに、不更新のパターンは業務委託契約が更新されないときにまとめました。

経路を知っておく実利は、単価だけではありません。どこから切られるかが分かるので、備え方が変わります。

3つのうち、どれを主軸にするか

理想を言えば①を厚くするのがいちばんいい。単価も交渉余地も、次への繋がりも強い。

**でも①は、自分の意思だけでは増やせません。**相手が思い出してくれるかどうかなので、待ちの要素が大きい。

だから私が実際にやっているのは、こういう配分です。

  • ①紹介を、生活の土台にする:切れにくいので、ここで固定費をまかなう
  • ②直を、時間をかけて育てる:予算サイクルに乗るまで半年から1年かかる前提で、細く長く動かす
  • ③常駐枠は、①②の谷を埋める使い方に限る:**入れっぱなしにしない。**稼働を全部埋めると、①②を育てる時間が消えます

私が独立直後にやった失敗が、まさにこれでした。③で週5を埋めて、安心して、半年後に案件が終わったときに手元に何も残っていなかった。稼働は埋まっていたのに、入口は1本も育っていなかったんです。

案件が2つ重なったときの選び方は案件の選び方の考え方とあわせて読んでみてください。

まとめ

フリーのコンサルに来る案件は、経路で見ると3つです。

  1. 紹介:紹介者の記憶が単価を決める。交渉余地は大きいが、決裂させにくい
  2. :発注元の予算が単価を決める。予算が固まる前に入れているかが全部
  3. 常駐枠:枠の値札の残りが単価。交渉余地はほぼ無い代わりに、決まるのが速い

**単価が上がらないと感じたら、腕より先に経路を疑ってください。**同じ実力でも、どの経路から来た話かで金額は変わります。そして経路は、自分で選べます。

いま自分の案件が3経路のどこに偏っているかを整理したい方は、フリーコンサル アカデミーの内容も見てみてください。