独立を支援する事業をやると決めたとき、最初にやったのは名簿づくりでした。声をかける相手を集めないと、何も始まらないからです。
そして、途中で手が止まりました。集めようとしていた相手が、間違っていたからです。
この記事は、検索でたどり着く一般論ではなく、こちらから声をかける側に回って分かったことを、当社の一次情報として書いたものです。声をかけた相手の名前や所属は書きません。反応の実数も、進行中のため出しません(後述します)。
最初、私たちは「独立して回っている人」を集めようとしていた
最初の設計は単純でした。すでに独立していて、実際に案件をこなしている人。その人たちに集まってもらえば、受け入れ先へ紹介できる。供給が先で、需要が後。そう考えていました。
名簿の条件も、それに沿って作りました。プロフィールに「フリーランス」「個人事業主」「独立」と書いてある人を探す。分かりやすいし、探すのも簡単です。
手が止まったのは、一言目に何を書くかを考えたときでした。
すでに独立して食えている人に、こちらから何と言って声をかけるのか。「独立の進め方をお教えします」とは言えません。もう独立している。「相談に乗ります」も変です。相談することが特にない。
既に食えている人には、こちらから渡せるものが何も無かった。 名簿の条件を書き終えた時点で、その一点に気づいた。
これは相手の問題ではなく、こちらの設計の問題です。支援する事業なのに、支援を必要としない人を集めようとしていた。
対象を、ファームに在籍している人へ切り替えた
そこで、2026年6月末に対象を切り替えました。狙うのは、いまもファームに在籍していて、いつか独立を考え始めているが、まだ踏み出していない人です。
具体的には、経験4〜10年、マネージャーの前後、30代あたり。会計や経理まわり、SAPの導入に関わっている人。私自身が同じ経路を通ったので、何に迷うかが想像しやすい層でもあります。
同時に、外す層をはっきり決めました。
| 外した層 | 理由 |
|---|---|
| すでに独立して回っている人 | 渡せるものが無い。完全に外した |
| 事業会社の経理・会計の人 | 独立志向がまだ固まっていない人が多く、今回は広げない |
| すでに独立して稼働中の人 | 在籍中の層で先に型を作る |
外す層を書き出すのに、狙う層を決めるのと同じくらい時間がかかりました。 ここを曖昧にすると、名簿は増えるのに一言目が書けない、という最初の状態に戻ります。
肩書きに「フリーランス」「個人事業主」「独立」と入っている人を機械的に除外する条件も入れました。探す条件より、外す条件のほうを先に固めたほうがいいというのが、ここでの学びです。
20通りの切り口を持っていたが、1つに絞った
名簿の切り口は、当初20通りありました。会社別、役職別、領域別、経験年数別。全部やろうとしていたわけです。
最終的に残したのは1つです。ファーム在籍かつ独立予備軍、という切り口だけ。
理由は、手応えを測れるようにするためでした。20通りに散らして送ると、反応があってもなくても、何が効いたのか分かりません。1本に絞れば、一言目を書き換えたときに何が変わったかが見えます。二段目に広げるのは、それが分かってからと決めました。
独立の前段でどこまで準備するかについては独立のタイミングとコンサル独立の準備に別途書いています。この記事は、声をかける側がどう考えているかの話です。
一言目に何を書かず、何を書いたか
在籍中の人に声をかけるとき、いちばん警戒されるのは「転職の勧誘」と「独立をあおる話」です。実際、そう読まれた瞬間に終わります。
そこで、書かないものを先に決めました。
- 独立を勧める言葉(「独立しませんか」は書かない)
- 今の仕事を否定する言い回し(「そのままでいいんですか」は書かない)
- 期限や希少性の演出(「今なら」「残り」は書かない)
- 単価や収入の話(一言目に金額を出すと、それだけの話になる)
残ったのは、事実だけです。自分がどこで何をしてきたか、領域が重なっていること、そして**「今すぐ動く話ではなく、現在地を知る感じで」**という一行。
私自身、ファームにいた頃に「いつか独立するとしたら、今のうちに何を準備しておけばいいんだろう」と漠然と考えながら、結局よく分からないまま日々の案件に追われていました。書けたのは、それが本当だったからです。
追いかけるのを、1回で止めた
もうひとつ決めたのは、反応が無かったときに追う回数です。1回だけにしました。
普通に考えれば、複数回送ったほうが返信は増えます。それでも1回で止めたのは、相手が在籍中だからです。会社にいる人に、外から繰り返し連絡が来るのは、それ自体が負担になります。返信が増えることと、その人との関係が残ることは、別のことです。
止める側の文面も先に書いておきました。返信は要らない、今の仕事を否定する意図はない、選択肢を持っておくのは在籍中でも損はないと思っている、それだけです。引き際を先に書いておくと、追いたくなったときに止まれます。
反応の実数は、ここには書きません
数字を期待して読んでくださった方には申し訳ないのですが、送信件数と反応率は非開示とします。
理由は2つあります。ひとつは進行中で、母数が小さいこと。小さい母数を割り算して「◯割」と書くと、実態より強い数字に見えてしまいます。もうひとつは、相手が在籍中の個人であることです。件数の内訳から所属が推測できる形にはしたくない。
推測で数字を作るくらいなら、書かないほうがいいと考えています。
踏み出せない理由は、案件でも貯金でもない(と、私たちは賭けている)
最後に、まだ確かめきれていないことをひとつ書きます。
在籍中の人が独立に踏み出せない理由は、案件が見つからないことでも、貯金が足りないことでもない。自分がいま、独立に対してどのくらいの位置にいるのかが分からないことだ──というのが、私たちが置いた仮説です。
だから着地は、案内でも資料請求でもなく、現在地を見るだけのものにしました。登録も要りません。
ただしこれは、まだ実測で確かめた事実ではありません。設計上そう賭けた、という段階です。確かめられた時点で、この記事に追記します。独立してから後悔した人が何に後悔したかは独立して後悔する人としない人に、相談から実際の案件までの流れは登録から最初の案件までに分けて書きました。
集める側に回って分かったのは、集める技術の話ではありませんでした。支援すると言いながら、支援を必要としない人を探していたという、こちらの設計の粗さのほうです。
在籍中のいま、自分の現在地だけ見ておきたい方は、30秒の独立準備度チェックからどうぞ。登録は要りません。
※本記事は当社の社内資料(2026年6月29日作成・2026年8月時点で運用中)に記録された、方針の変更とその理由に基づいています。相手方の氏名・所属および反応の実数は記載していません。