独立を決めたとき、私がいちばん眠れなかったのは単価の話ではなく、「そもそも次の案件が来るのか」でした。会社にいた頃は、案件は上から降ってきました。独立した瞬間、その蛇口が全部止まる。この記事は、独立コンサルの案件の取り方を、特別な営業術としてではなく、飛び込み営業が全滅した私が「これは効いた」と身をもって確かめた入口の作り方として渡します。フリーランスでも業務委託でも、次の仕事が来るか不安な人にこそ読んでほしい。
独立直後、私は「案件の取り方」を完全に勘違いしていた
独立して最初に思ったのは、「これからは自分で営業しないといけない」でした。だから、いかにも営業らしいことをやろうとした。知らない会社に問い合わせを送り、交流会に顔を出し、名刺を配る。動いている自分に安心したくて、とにかく数を打ちました。
結果から言うと、そこからは一件も決まりませんでした。今なら理由が分かります。コンサルという仕事は、相手が「この人になら会社の中を見せていい」と思えるかどうかで決まる。初対面の相手に、いきなりそれを求めるのは無理があるんです。案件の取り方でまず捨てるべきだったのは、「知らない人を口説く」という発想そのものでした。
実際に効いたのは、営業ではなく「人からの案件」だった
では最初の案件はどこから来たか。前の職場で一緒に働いた人からの、たった一本の連絡でした。次の案件も、そのまた次も、たどるとほとんどが「私を知っている誰か」から始まっています。飛び込みで積み上げた数字ではなく、過去に一緒に汗をかいた記憶のほうが、はるかに強い入口だった。
理由はシンプルで、案件を出す側からすると、いちばん怖いのは「頼んだ人がハズレだったとき」だからです。知らない人に発注するのは賭けですが、以前の仕事ぶりを見ている相手なら、その賭けがぐっと減る。つまり独立コンサルの案件は、腕を売り込んで取るものというより、すでにある信頼を思い出してもらって始まるもの。ここに気づいてから、私の動き方は根本から変わりました。
私が今も回している、案件の3つの入口
焦って一発を狙うのをやめて、代わりに入口を複数持つようにしました。今も回しているのはこの3つです。
① 過去に一緒に働いた人 前職の同僚、当時の上司、昔のクライアント。この人たちは私の実力も欠点も知っています。売り込む必要がないぶん、話が早い。大事なのは「困ったら連絡ください」で終わらせず、こちらから近況を軽く伝えておくこと。相手は、あなたが今なにをやっているかを知らなければ、思い出しようがありません。
② 発信を見て連絡をくれる人 自分がどんな仕事をしているかを、記事やSNSで淡々と出し続ける。すぐには効きません。でも半年、一年と続けると、「ちょうどこういう人を探していた」という連絡が、こちらが寝ている間に届くようになる。①が過去の縁なら、②はこれから出会う人への入口です。
③ 紹介の紹介 一度きちんと仕事をすると、その相手が別の誰かに名前を出してくれることがあります。これがいちばん確度が高い。ただし待っていても起きないので、私は仕事が終わるたびに「もし近い困りごとの人がいたら、いつでも紹介してください」と正直に一言添えるようにしています。
3つに共通するのは、どれも「知らない人を振り向かせる」入口ではないこと。案件の取り方の軸は、新しく口説くことより、すでにある縁を絶やさないことにあります。
「今すぐ案件がほしい」ときに、私がまずやること
とはいえ、目の前の売上が怖い月は必ず来ます。そういうとき、焦りにまかせて安い数字で受けると、あとがもっと苦しくなる。私も一度それをやって後悔しました(このあたりは独立コンサルが安く受けて損しないためにに書いています)。
だから今は、順番を決めています。まず、声をかけられる相手を紙に書き出す。次に、その一人ひとりに「最近こんな仕事をしています」と近況だけ送る。売り込みではなく、思い出してもらうための連絡です。営業が怖くて手が止まる人は、営業が怖い独立コンサルへも合わせて読んでみてください。案件の取り方でつまずく人の多くは、腕ではなく、この「思い出してもらう一歩」を踏めていないだけだったりします。
正直に言うと、入口が育つまでには空白の時間がある
ここまで読んで、「入口を作ればいいのは分かった、でも今すぐには効かないのでは」と思った人もいると思います。その通りです。過去の縁も、発信も、紹介も、まいてすぐ芽が出るものではありません。私も独立して最初の数ヶ月は、連絡しても反応がなく、記事を書いても誰にも読まれず、正直かなり不安でした。
この空白の時期にやってはいけないのが、焦って入口の質を下げることです。とにかく決めたい一心で、誰でもいいから安く受ける、興味のない領域に手を出す。すると、そこから来る次の縁も、同じように安くて興味の持てない仕事になっていく。入口は、まいた種の質がそのまま実の質になります。だから空白の時期こそ、来た話を一度立ち止まって選ぶ。すぐ埋めたい気持ちと闘うのが、いちばん地味で、いちばん効く投資でした。
私の場合、最初の紹介が生まれたのは、ある案件でとにかく丁寧に締めまで見届けたあとでした。派手な成果ではなく、「頼めば最後まできちんとやる人」という記憶が相手に残り、それが半年後に別の会社への一言になった。紹介は狙って取るものではなく、目の前の一件をちゃんとやった副産物としてしか生まれない。案件の取り方の一番深いところは、次を探す動きより、今の一件の仕上げ方にあります。
案件が途切れない人は、動いていない時間に種をまいている
独立して分かったのは、案件が途切れる人と途切れない人の差は、忙しいときの過ごし方に出るということです。稼働で手一杯になると、発信も、近況連絡も、つい止まる。でもその沈黙の数ヶ月が、半年後の「仕事がない月」を作ります。
だから私は、案件が埋まっているときこそ、次の種をまくようにしています。記事を一本出す、しばらく連絡していない人に近況を送る。派手なことは何もしていません。案件の取り方の正体は、瞬間的な営業力ではなく、忙しくても入口を閉じない地味さのほうだと、今は思っています。
まとめ|案件の取り方は才能ではなく、入口を絶やさないこと
独立コンサルの案件の取り方に、魔法の営業トークはありませんでした。効いたのは、知らない人を口説くことではなく、すでに自分を知っている人の記憶を絶やさないこと。過去の縁、発信、紹介という入口を3つ持ち、忙しい時期にも閉じない。ただそれだけです。
もし今、次の案件が来るか不安なら、まずは声をかけられる相手を一人だけ思い浮かべて、近況を送ってみてください。案件は、腕を磨いた先ではなく、その一通の先から動き出します。単価の付け方まで含めて整えたい人は、独立コンサルの単価の決め方もどうぞ。私も、同じ不安の中からここまで来ました。