独立を決めたとき、いちばん怖かったのは「いくらでお願いします」と口に出す瞬間でした。相手の表情が一瞬曇るのが怖くて、相場も分からなくて、結局かなり安い数字を言ってしまう。私も最初の案件でそれをやって、半年後に静かに後悔しました。この記事は、コンサルの単価の相場を当てる話ではありません。安く受けて損した私が、今なら必ず使う「自分の数字で単価を出す」考え方と手順を、そのまま渡します。フリーランスでも業務委託でも、独立直後の値付けが怖い人にこそ読んでほしい。
最初の案件で、私は単価を安く出して半年後に後悔した
独立して最初に声をかけてもらった案件で、私は月の単価をかなり下げて出しました。理由は単純で、断られるのが怖かったからです。会社を辞めた直後で、毎月入っていた給料がゼロになる感覚が初めてで、とにかく「決まること」を最優先にしてしまった。相手には喜ばれて、その場の私は心底ほっとしました。決まった夜は、これで食べていけると本気で思っていたんです。
ところが半年も経つと、別のやり方で出した数字を知って、自分がどれだけ低く受けていたかに気づきます。きつかったのは金額そのものより、『安いから』という理由で、だんだん雑に扱われ始めたことでした。会議の呼ばれ方も、お願いされる仕事の重さも、最初の数字に引きずられていく。安く出すと、相手の中での私の価値も同じだけ下がる。これは後から値段を上げれば直る話ではなく、最初のひと言でほぼ決まってしまう。だから、コンサルの単価は気合いや度胸ではなく、決め方を一つ持っておくべきだと、痛いほど分かりました。
相場を当てにいくと、独立コンサルの単価は決められない
独立の前後で多くの人が、まず相場を探します。フリーランスの単価はいくらか、業務委託の相場はどのくらいか、と何度も検索する。気持ちはよく分かります。私も同じことを夜中までやりました。でも、相場はあなたの数字を決めてくれません。検索でいくら数字を集めても、最後に「で、自分はいくらと言うのか」は一ミリも近づかない。
理由は二つあります。一つは、世に出ている相場は条件がバラバラだということ。稼働日数も、任される役割も、経験年数も違う数字が、ひとまとめに「相場」として並んでいる。もう一つは、相場に合わせると『誰かの平均』で自分を値付けすることになり、たいてい安い側に引っ張られる。独立の単価は、外の平均からではなく、自分の中の数字から立ち上げるものです。次の章から、私が実際に値付けで使っている組み立て方を、順番にそのまま渡します。
独立コンサルの単価は、この順番で「自分の数字」から出す
私が今、値付けのたびに必ず通す順番はこうです。まず一つ目に、必要な年収を決める。生活費に、税金と社会保険、会社の経費、そして売上が立たない月のための余白を足した数字です。手取りで欲しい額ではなく、そこに公的な負担まで上乗せした『稼ぐべき総額』を先に置く。会社員のときは天引きで見えなかった負担が、独立すると全部こちら持ちになる。ここを曖昧にすると、あとの計算が丸ごと崩れます。
二つ目に、一年の稼働月を控えめに見ます。十二ヶ月まるごと埋まる前提は危ないので、私は十ヶ月くらいで割ります。営業の時間も、休みも、案件と案件の切れ目も必ずあるからです。三つ目に、その月額を実際に動く日数で割って、一日あたりの単価を出す。フルで張りつく案件なのか、週二日なのかで、ここは大きく変わります。最後に、相手にとっての価値で上に調整する。私の専門でいえば、経理や財務のしくみを直すことで、相手の会社が月に何時間ぶん、いくらぶん楽になるのか。かかる費用ではなく、生まれる成果の側から見直すと、自分で出した数字に芯が通ります。
私が実際に使う計算の型を、数字で動かしてみる
言葉だけだと頭が動かないので、型に数字を入れてみます。あくまで考え方を見せるための例で、金額は人によって変わりますし、保証もしません。仮に、必要な総額を一年ぶんで置く。それを稼働十ヶ月で割ると、一ヶ月あたりに最低限ほしい金額が出る。さらに、その月の稼働日数で割ると、一日あたりの最低ラインが見えてくる。これがあなたの『これ以下では受けない』という床です。数字そのものより、床という言葉を持てたことが大きい。
大事なのは、この床を相手に伝えることではなく、自分の中にだけ静かに持っておくことです。床を知っていると、安い依頼が来ても心が揺れない。『助かるんですが少し下げられませんか』と言われた瞬間に折れていた私が、今は床と照らして冷静に判断できる。最初の案件で私が間違えたのは、この床を一度も計算しないまま値段を口にしたことでした。一度でも自分の数字で床を出しておくと、値付けは度胸の勝負ではなく、ただの確認作業になります。怖さの正体は、たいてい『まだ分かっていないこと』なんです。
安く受けないために、私が守っている三つのこと
一つ目は、床より下では絶対に受けないと、案件が来る前に決めておくこと。その場で考えると必ず情に流されます。一度でも例外を作ると、その例外がいつのまにか自分の普通になる。二つ目は、安くする代わりに、金額ではなく条件で調整すること。単価そのものを下げるのではなく、稼働日を減らす、見る範囲を絞る、期間を区切る。同じ『安くしてほしい』に対しても、単価を崩さずに応える道はちゃんとあります。
三つ目は、値段を下げて取った仕事は、たいてい自分も相手も幸せにしないと、身をもって知っておくこと。安さで選ばれた関係は、結局また安さで切られます。業務委託でもフリーランスでも、長く続く相手は数字ではなく仕事の中身で選んでくれる。私はそれを遠回りして学びました。だから今は、コンサルの単価を最初から下げて入ることを、もうしません。下げるのは一瞬で、上げ直すのは何倍も難しいと、自分の半年で分かったからです。
値付けは才能ではなく、型を一度持てば怖くなくなる
ここまで読んで、特別な交渉術の話が一つも出てこなかったことに気づいたと思います。独立の単価は、性格でも度胸でもなく、自分の数字を順番に組み立てる作業です。必要な総額を置き、控えめな稼働で割り、相手の価値で調整し、床を持つ。たったこれだけの型でも、相手の前で揺れなくなる。私が欲しかったのは、強気になれる気合いではなく、この一本の順番でした。
私は型を持たずに突っ込んで、半年ぶん損をしました。同じ後悔をしてほしくないから、この記事を書いています。値付けが怖いのは、あなたが弱いからではありません。ただ、まだ自分の数字を一度も出していないだけです。今日、十分でいいので一度だけ計算してみてください。それだけで、次に金額を口にするときの声が、確かに変わります。