「単価、そろそろ上げたいけど、どう切り出せばいいのか」。独立コンサルとして数年やってきて、いちばん相談されるのがこれです。私も最初は、単価の上げ方=交渉のうまさだと思っていました。でも実際に自分の単価が上がったのは、うまく押した時ではなく、押さなくても上げてもらえる中身に自分が変わった時でした。この記事では、コンサル単価の上げ方を、SAPの財務領域で少しずつ数字を上げてきた私の実体験から、交渉の前にやるべき3つの打ち手として渡します。フリーランスでも業務委託でも、単価アップを本気で狙う人へ。数字は盛りません。

単価の上げ方を「交渉術」だと思っていた頃、私は失敗した

独立して少し経ち、そろそろ単価を上げたいと思った時期がありました。本やネットで交渉のコツを調べて、根拠を並べて、いざ切り出す。結果は、気まずい空気だけが残って、数字はほとんど動きませんでした。

あとで分かったのは、単価というのは「言い方」で動く幅がとても小さいということです。相手の中で私の価値がそのままなら、どれだけ理屈を積んでも、上がってせいぜい少し。逆に、相手の中での価値が上がっていれば、大して押さなくても向こうから条件が良くなる。コンサル単価の上げ方でまず捨てるべきだったのは、「交渉で勝ち取る」という発想でした。単価は勝ち取るものではなく、上げてもらえる状態を先に作るものだったんです。

打ち手①:横に広げず、縦に深くする

いちばん効いたのはこれです。単価が伸び悩む人ほど、「あれもできます、これもできます」と守備範囲を横に広げようとする。気持ちは分かります。断られるのが怖いから、間口を広くしておきたい。でも横に広げると、相手からは「そこそこ何でもやる人」に見えて、単価は平均に張りつきます。

私がやったのは逆で、財務・経理のしくみを直すという一点に、あえて深く潜ることでした。同じ課題でも「この人じゃないと危ない」と思ってもらえる深さまで行くと、相手は替えがきかなくなる。替えがきかない人の単価は、平均から離れていく。未経験に近い入り方だと月60〜75万あたりから始まることも珍しくありませんが、縦に深めた領域で「この人でなければ」を作れると、そこから先の伸び方がまるで変わります。単価の上げ方の本丸は、器用さではなく、狭くて深い一本です。

単価は守備範囲を横に広げると平均に張りつき、一点に縦に深めると替えがきかなくなって上がることを示した図解

打ち手②:かかった時間ではなく、生まれた成果で語れるようにする

二つ目は、自分の仕事を「どれだけ動いたか」ではなく「相手に何が生まれたか」で説明できるようにすること。多くの人は、稼働日数や作業量で自分を語ります。でも相手が単価を上げる判断をするのは、あなたが忙しかったからではなく、あなたのおかげで会社が楽になったと実感できたときです。

だから私は、案件の途中から、成果が見える形を意識して残すようにしました。締めにかかっていた時間がどれだけ減ったか、止まっていた判断がどれだけ前に進んだか。派手な数字である必要はありません。相手の現場が「確かに軽くなった」と言える事実が一つあれば、次の契約更新で、単価の話はこちらが押さなくても向こうから出てきます。単価アップは、成果を主張する技術ではなく、成果が向こうに見えている状態のことです。

打ち手③:値下げで取った関係を、途中で作り直す

三つ目は、少し苦い話です。安く入ってしまった案件は、放っておくと安いまま固定されます。最初の数字が、そのまま相手の中の「あなたの相場」になるからです。私も、独立直後に怖くて安く受けた案件を、あとで上げ直すのにずいぶん苦労しました。

ここでやるべきは、いきなり値上げを切り出すことではなく、担う範囲を一度組み直すことです。同じ単価のまま見る範囲がじわじわ増えているなら、その事実を並べて「役割を整理させてください」と話す。単価を上げる前に、まず「今の単価に対して何をやっているか」を相手とそろえる。この土台があると、単価アップの話は交渉ではなく、当たり前の見直しになります。安く受けてしまったこと自体をどう防ぐかは、独立コンサルが安く受けて損しないためににも書きました。

上げるタイミングは「更新の少し手前」に置く

打ち手をそろえたら、次はいつ切り出すかです。ここで多くの人が、思い立った瞬間に、案件の途中で唐突に単価の話を持ち出してしまう。相手からすると、進行中に条件を変えられるのは身構える話で、たいてい空気が固くなります。

私が意識しているのは、契約の更新が近づく少し手前に置くこと。更新は、相手も「この体制を続けるか」を自然に考えるタイミングです。その少し前に、この期間でどんな成果が生まれたかを、恩着せがましくならない程度に共有しておく。すると更新の話になったとき、単価アップは唐突なお願いではなく、成果に対する当たり前の見直しとして扱われます。同じ内容でも、進行中に急に言うのと、更新の手前で成果を土台に話すのとでは、相手の受け取り方がまるで違う。単価の上げ方は、何を言うかと同じくらい、いつ言うかで決まります。

もう一つ、上げる幅も現実的に置くのが大事です。一気に倍にしようとすると、相手は「別の人を探そうか」と一瞬考えてしまう。私は、相手が「まあ、それだけの仕事はしてもらったな」と納得できる範囲を意識します。単価アップは一度の大勝負ではなく、更新のたびに少しずつ積む。焦って一発を狙うより、この積み重ねのほうが、結局は遠くまで届きました。

そもそも単価は、上げる前に「決め方」で差がつく

ここまで単価の上げ方を書いてきましたが、正直に言うと、いちばん効くのは最初の値付けです。入口で自分の数字を持って入った人と、相場に流されて安く入った人とでは、その後の上げ方の難易度がまるで違う。上げ直すのは、最初に少し高く出すより何倍も大変だからです。

まだ値付けの型を持っていない人は、単価を上げる話に進む前に、独立コンサルの単価の決め方を一度読んでみてください。SAP領域の単価の現実感についてはSAPコンサルタントの年収のリアルにまとめています。上げ方と決め方は、地続きの話です。

まとめ|単価は勝ち取るのではなく、上げてもらえる自分を作る

コンサル単価の上げ方に、切り札のような交渉トークはありませんでした。効いたのは、縦に深く潜って替えのきかない一本を作ること、かかった時間ではなく生まれた成果で語れること、安く入った関係を役割から作り直すこと。どれも、相手の中での価値を先に上げる打ち手です。

単価アップを狙うなら、次の交渉の準備をする前に、この3つのうち一つを今日から動かしてみてください。単価は、押して動かすより、押さなくても上がる自分になったときに、いちばん静かに上がります。私も、そうやって少しずつここまで来ました。