「コンサルって、何歳まで働けるんですか」

この質問を受けるとき、聞いている人はたいてい40歳前後です。そして本当に聞きたいのは寿命の話ではありません。**「あと何年、いまのやり方が通用するのか」**です。

私はSAP導入のプロジェクトマネージャーとしてファームにいて、そこから独立しました。同期や近い年次の人たちは、いま会社に残っている人、事業会社へ移った人、独立した人に分かれています。同じ年齢で、置かれている状況がまるで違う。

その差を見ていて分かったことが一つあります。年齢そのものは壁になっていません。壁になっているのは、選べる進路の本数が減っていくことです。

「何歳まで」に、定年のような答えはない

先に、答えられないことを書いておきます。

ファームの就業規則上の定年は、普通の会社と変わりません。ただしその年齢まで同じ役割で居続ける人は、私の周りにはほとんどいません。 定年より前に、別の場所へ移るか、役割が変わるかのどちらかが起きます。

だから「何歳まで」を年齢で答えると、必ず外れます。代わりに答えられるのは、進路ごとに、いつ・どんな理由で選択肢が減るかです。ここから3本に分けます。

進路1:会社(ファーム)に残る──壁はポストの数

ファームに残る場合、年齢の壁の正体は能力ではありません。ポストの数です。

コンサルの組織はピラミッドで、上に行くほど席が減ります。しかも上位の席は、案件を持ってくる役割に変わる。デリバリーが上手いことと、案件を持ってくることは、まったく別の能力です。ここで、それまで評価されてきた強みが、そのまま次の等級の評価軸にならないという反転が起きます。

この反転が起きるのが、私の観測では30代後半から40代前半です。ここで上がれた人は、その先しばらく年齢の話をしなくて済みます。上がれなかった人は、**「同じ役割のまま年次だけ上がる」**という、いちばん居心地の悪い状態に入ります。

このとき起きているのは、コンサルがきついと言われるときの消耗とは別種のものです。労働時間ではなく、自分の位置が動かないことによる消耗です。時間は減っていないのに、しんどさの質が変わる。

進路2:事業会社に移る──壁は求人側の等級設計

次に、事業会社へ移る道です。ここは年齢の壁がいちばん明確に、しかも早く来ます。

理由は単純で、受け入れ側の等級設計に年齢の相場が組み込まれているからです。30代なら現場のマネージャー級として複数の枠があります。40代半ばを超えると、残っているのは部長級から上の、もともと数が少ない枠になる。能力の問題ではなく、枠の数の問題として選択肢が減ります。

そしてもう一つ、見落とされやすい点があります。事業会社に移ったあと、3年目あたりで進路がもう一度割れるということです。戻る人、残る人、そこから独立する人に分かれる。この分岐で効いていたのは役職でも報酬でもなく、移った先で意思決定の当事者になれたかどうかでした。詳しくはコンサルから事業会社に移った人が3年後に言うことに書きました。

つまり事業会社への移籍は、年齢の壁を一度回避する手ではあっても、消す手ではありません。 ポストコンサルで事業会社に行く前にと合わせて読むと、時間軸が見えると思います。

進路3:独立する──壁がいちばん遅く、形が違う

3本目が独立です。ここは年齢で切られる場面が、いちばん少ない。

発注する側から見ると、独立した人に頼む理由は「その人でないと困るから」です。等級表がないので、年齢で機械的に落とされることがありません。実際、私より上の年代で、現役で受け続けている人を何人も知っています。

ただし、壁がないわけではありません。形が違うだけです。

独立で効いてくる壁は、指名があるかどうかです。年齢が上がるほど、単価も高い前提で見られます。そのとき「経験が長いから」では通りません。この人に頼む理由が具体的に言えるかどうかで決まります。単価の作られ方そのものは単価の決め方に書いたとおりで、年齢は根拠になりません。

だから独立は、年齢の壁が遅い代わりに、準備の有無がそのまま出る道です。準備なしに年齢だけ重ねて出ると、いちばん厳しい形で跳ね返ってきます。独立して後悔したこと仕事が無い時期の話は、そこを正直に書いたものです。

3本を並べると、塞がる順番が見えてくる

ここまでを並べ直します。塞がる順番があります。

  1. 事業会社への移籍が最初に細ります(枠の数の問題)
  2. 次にファーム内で上がる道が細ります(ポストの数の問題)
  3. 独立は最後まで残りますが、残るだけで、準備がなければ選べません

意地悪な言い方をすると、いちばん最後まで残る選択肢が、いちばん準備に時間がかかる選択肢です。そして多くの人は、1と2が塞がってから3を考え始めます。

これが「年齢の壁」と呼ばれているものの、実際の中身だと思っています。壁は年齢の側にあるのではなく、準備を始めた時期の側にあります。

塞がる前に、1つだけやっておくこと

全部やろうとすると動けないので、1つに絞ります。

社外に出せる形で、自分の実績を書いておくことです。

在職中の実績は、社内の言葉で記録されています。プロジェクト名、社内の役割名、社内の評価。これは外に出した瞬間に意味を失います。固有名も出せません。独立でも移籍でも、最初に見られるのは「何をした人か」を社外の言葉で言えるかどうかです。

これは辞めると決めてからでは間に合いません。判断の記録も、失敗をどう収束させたかも、その場にいるうちにしか取れないからです。書き方は辞める前に社内で取っておく実績に、外に出す形式はスキルシートで最初に読まれる3項目にまとめました。

辞める時期そのものの判断は、独立するタイミング独立準備の順番の側です。

SAP領域の年齢の話は、別で書いています

私の本業はSAP導入なので、この領域だけ事情が違う部分があります。導入案件の波と、経理・財務の業務知識が年齢で古びにくいことが効いてきます。そちらはSAPコンサルは何歳まで働けるかに分けて書きました。入り口の話はSAPコンサルへの転職は何歳まで間に合うか、コンサル全般の入り口は未経験からコンサルになる道は今何本あるかにあります。

まとめ

  • 「コンサルは何歳まで」に、定年のような一本の答えはない
  • 年齢が効くのは単価ではなく、選べる進路の本数
  • 事業会社への移籍がいちばん早く細り、次にファーム内の昇格が細る
  • 独立は最後まで残るが、準備がなければ残っていても選べない
  • だから、いま1つだけやるなら「社外に出せる形で実績を書く」

年齢を気にし始めた時点で、あなたはまだ3本とも持っています。減るのはこれからで、減る順番は分かっている。 それなら、いちばん最後まで残る道の準備を、いちばん早く始めるのが合理的です。


※本記事は独立した個人の実務経験にもとづく整理であり、特定の企業の人事制度や採用基準を示すものではありません。年齢や等級の扱いは組織ごとに異なります。