「コンサルはきつい」。検索すると、激務、つらい、辞めたい、という言葉が並びます。私もその渦中にいたから、気持ちは痛いほど分かります。SAPの導入プロジェクトで、終電も、土日も、頭が休まらない感覚も、ぜんぶ通ってきました。だからこの記事では、コンサルの何が、どうきついのかを、きれいごと抜きで分解します。そのうえで、私が独立して働き方をどう選び直したかを書きます。「きついから逃げよう」という話ではありません。きつさの正体を見て、それを自分で設計し直せるかどうかの話です。

私が消耗したのは、労働時間そのものではなかった

正直に書きます。導入プロジェクトの忙しい時期、私の労働時間は確かに長かった。でも、振り返って本当にきつかったのは、時間の長さそのものではありませんでした。長く働いても充実している日はあるし、短くても消耗しきる日もある。私を削っていたのは、別のところにありました。

いちばんこたえたのは、自分でコントロールできない予定に、ずっと振り回されることでした。クライアントの都合で会議が動く、仕様が土壇場でひっくり返る、本番稼働の日付だけは絶対に動かせない。自分の意思とは関係ないところで締め切りが決まり、そこに向かって全部を合わせる。終わりが自分で引けない感覚が、いちばん心を削りました。

二つ目は、「常に頭の片隅でプロジェクトが動いている」状態から降りられないこと。家に帰っても、休日でも、頭のどこかでトラブルの可能性を計算している。物理的に休んでいても、脳が休んでいない。これが続くと、眠っても疲れが抜けなくなります。

具体的に思い出せる場面があります。本番稼働を控えた週末、家族と出かけていても、5分おきにスマホを確認していました。何かあったわけではない。ただ「何かあったらどうしよう」という想像だけで、休日が休日でなくなる。あのとき消耗していたのは、長時間労働ではなく、心を一度もオフにできない状態が何ヶ月も続いたことでした。コンサルのきつさを「労働時間が長い」とだけ捉えると、本質を見誤る。きつさの中身は、時間・裁量・心理的な負荷に分かれている。ここを分けて見られると、対処の打ち手が変わってきます。

「コンサルはきつい」を、3つに分解する

きつい、という一語のままだと、逃げるか耐えるかの二択になってしまいます。でも分解すると、それぞれに別の手の打ちようがあると分かります。私が自分の消耗を整理したときの3つの軸です。

  1. 時間の負荷(量)。 単純に拘束が長い。これはプロジェクトの繁忙期や、人手不足の現場で起きます。比較的わかりやすい問題で、案件の選び方や体制で減らせる余地がある。
  2. 裁量のなさ(コントロール)。 自分で予定も優先順位も決められない。上にも、クライアントにも、納期にも縛られ、判断の自由がない。実は、これが長期的にいちばん人を消耗させると私は思っています。
  3. 心理的な負荷(責任と緊張)。 失敗できない、常に見られている、頭が休まらない。本番稼働や、大きな金額が動く局面で重くのしかかる。

この3つは、見分けると打ち手が変わります。たとえば私の知るかぎり、「忙しすぎて辞めたい」と言っていた人が、もっと忙しくないはずの現場に移ったのに、半年でまた同じことを言い出す、というのは珍しくありません。これは時間の負荷ではなく、裁量のなさが原因だったのに、時間の問題だと思い込んで現場だけ変えたから起きる。逆に、心理的な負荷で消耗していた人が、抱え込みを手放して人に任せられるようになっただけで、同じ忙しさのまま楽になることもある。

だから、自分が今きついとき、その正体がこの3つのどれなのかをまず見てください。時間が問題なら案件を変えれば減る。でも、裁量のなさが原因なら、別のきつい現場に移っても同じことが繰り返される。逃げ方を間違えると、職場を変えても同じ消耗に戻る。私が経理からSAPの世界に移ったときの実際の動き方は経理からSAPコンサルへ転身した実話に書きましたが、職種を変えるだけでは、この3つのうち裁量と心理の負荷は必ずしも消えませんでした。

独立で、私が取り戻したもの・取り戻せなかったもの

私は最終的に独立しました。よくある「独立すれば自由になれる」という話を期待されると、少し違います。独立で軽くなった負荷もあれば、まったく軽くならない負荷もあった。正直に両方書きます。

軽くなったのは、裁量のなさです。これがいちばん大きい。どの案件を受けるか、どの曜日に働くか、どこまでの範囲を引き受けるか。これを自分で決められるようになったことで、消耗の質が明らかに変わりました。同じ忙しさでも、「自分で選んで忙しい」のと「振り回されて忙しい」のは、心の減り方がまるで違う。私は週の真ん中に仕事を入れない日を作っていますが、これは独立して初めて持てた裁量です。

自由になったというより、**「きつさの種類を、自分で選べるようになった」**という感覚が近い。長く働く日もある。でも、その日を自分で決めたという一点が、消耗をまるで違うものにします。

一方で、軽くならなかったのは、責任の重さと、収入の不安です。むしろ独立すると、案件が途切れる怖さという新しい負荷が増える。会社員のときの「毎月決まった給料」が、どれだけ精神を守ってくれていたかを、独立して初めて知りました。この収入が消える怖さと、独立後の孤独についてはフリーランスの「孤独」と不安との付き合い方に正直に書いています。きついから独立、という単純な逃げ道はない。負荷の中身が入れ替わるだけ。それでも私は、自分で選べる裁量と引き換えにするなら、新しい負荷のほうがまだ抱えられる、と感じています。

きつさから逃げるのではなく、設計し直す

ここまで読んで分かるとおり、私が言いたいのは「コンサルはきついから辞めて独立しよう」ではありません。それは逃げの構図で、たいてい同じ場所に戻ります。私が伝えたいのは、きつさを分解して、自分で働き方を設計し直すという発想です。

会社員のまま設計し直せることもあります。たとえば、

  • 自分のきつさが時間の負荷なら、案件の繁忙期の見通しを早めに上長と握る、体制の補強を要求する。
  • 裁量のなさなら、判断を任せてもらえる役割やフェーズに自分を寄せていく。
  • 心理的な負荷なら、頭が休まる時間を意図的に確保し、抱え込みを一人で背負わない。

それでも構造的に変えられない、自分の人生の裁量を会社の外に持ちたい、と思ったときに初めて、独立が選択肢に入ります。私の場合がそうでした。独立は最終手段であって、最初の一手ではない。辞める前にやるべきことを順番にしたものはコンサルの独立準備は何から?にまとめてあります。

きついの正体を見れば、次の一手が変わる

コンサルがきついのは、気のせいでも、あなたが弱いからでもありません。時間・裁量・心理という、はっきりした負荷が実在します。でも、「きつい」とひとくくりにしている限り、耐えるか逃げるかの二択から出られない。きつさを3つに分解し、自分のきつさはどれなのかを見る。 それだけで、打ち手は耐える・逃げる以外に何通りも出てきます。

私はかつて、終わりの見えないプロジェクトの中で、自分のきつさの正体が分からないまま消耗していました。独立して働き方を選び直したとき、軽くなった負荷も、入れ替わった負荷もあった。でも一番変わったのは、きつさを自分のものとして引き受けられるようになったことです。あなたが今きついなら、まずその正体がどれなのかを、一度だけ書き出してみてください。逃げる前に、見る。次の一手は、そこから変わります。

自分のきつさが、案件で減るものなのか、構造的に独立しないと変わらないものなのか。一人だと、なかなか切り分けられません。無料相談で、あなたの今の働き方を一緒に分解するところから始められます。逃げるためでなく、選び直すために使ってください。