契約書に書かれた終了日が、あと1か月後に迫っています。

切られたわけではありません。更新されないと言われたわけでもない。トラブルもない。ただ、最初から決まっていた終わりが、そろそろ手前まで来た。それだけです。

この場面がやっかいなのは、何も悪いことが起きていないので、動き出す理由が自分の中にないことです。まだ毎日仕事はあるし、請求も立つ。今月は何も困らない。困るのは来月と、その次の月です。

この記事は、その残り1か月だけを扱います。

似た場面を別々に書き分けてあるので、先に置いておきます。まだ終わりが見えていないが谷の材料が揃っている時期は独立コンサルの「谷の月」はどう作られるか、「今期で終わりです」と告げられた月は業務委託の契約が更新されないと分かった月にやること、途中で切られた場合は業務委託を切られた日から30日で何をするか、そして完全に切れてしまってからの立て直しはフリーランスで「仕事がない」が怖かった私がやったことにあります。ここでは予定どおり終わる案件の、最後の1か月の話だけをします。

稼働の谷より、入金の谷は1〜2か月あとに来る

最初に、逆算の起点を決めます。ここを間違えると、動き出す時期が1か月ずれます。

多くの人は「稼働が空く月」を谷だと思っています。私もそうでした。ところが実際に手元が薄くなるのは、その月ではありません。

理由は請求と入金のずれです。月末締めの翌月末払いなら、9月の稼働ぶんは10月末に入ります。翌々月払いなら11月末です。つまり9月末で終わる案件は、9月ぶんの入金がある10月末までは、見た目のうえで何も起きません。手元が薄くなるのは、10月に稼働がなかったぶんの入金がない11月末からです。

稼働入金(翌月末払いの場合)
9月(最終月)あり8月ぶんが入る
10月空く9月ぶんが入る(まだ平常)
11月入らない(ここが谷)

見ておくべき日付は、終了日ではなく**「入らない月」の日付**です。私はこれを一度取り違えて、稼働が空いた月を無事に乗り切ったことで安心してしまい、その次の月に慌てました。

逆算はこう置きます。残り1か月で動き始めれば、次の稼働が始まるまでに2〜3か月かかったとしても、入金の谷は1か月で済むことが多い。空いてから動き始めると、谷は2か月以上になります。1か月前に動くかどうかで、埋める穴の大きさが変わります。

最初にやるのは営業ではなく、終わり方の確認4点

残り1か月と分かって、いきなり連絡を送り始めるのは順番が違います。先に自分の足元を確定させます。確認するのは4つだけです。

1. 契約書の終期と、更新の意思表示の期限

ここがいちばん取り落とされます。業務委託契約には、終期の書き方が2種類あります。

  • 黙っていると終わる型……「期間満了をもって終了する。更新する場合は別途書面で合意する」
  • 黙っていると続く型……「いずれからも申し出がない場合、同一条件で1か月/3か月延長する」(自動更新)

後者の場合、更新しない意思表示の期限が終了日の1か月前や3か月前に置かれていることがあります。つまり「あと1か月」と思っていた契約が、気づいたときには次の期間に入っていることも、逆にこちらから何も言わないまま自動で続く前提だったことも、両方あります。契約書の条項の読み方は業務委託契約書のどこを見るかにまとめました。

2. 最終稼働日と、検収の締め

最終月の稼働報告をいつ出すか、検収に何日かかるか。ここが月をまたぐと、入金も1か月ずれます。

3. 最終請求のタイミングと支払サイト

上の表を自分の契約の数字で埋めます。5分で終わります。

4. 貸与品とアカウントの返却期日

PC、入館証、社内システムの権限。返却が遅れると先方の管理部門に迷惑がかかり、最後の印象がそこで決まります。再び声がかかるかどうかに、地味に効きます。

この4つは、終わりが見えた週のうちに紙に落としてしまう。残り1か月のあいだ、何度も思い出して手が止まるのを防ぐためです。

延長の芽は、こちらから1回だけ確認する

次に、いま動いている案件が延びる可能性を確かめます。ここで聞き方を間違えると、確かめたつもりで何も分からないまま終わります。

やりがちなのが「延長はありますか」です。この聞き方だと、答えは「まだ分からない」しか返ってきません。相手も本当に分かっていないからです。

聞くべきは「何が決まれば、延長になりますか」です。

この聞き方だと、相手は決まっていない中身のほうを話してくれます。返ってくる答えは、だいたい3つの型に分かれます。

返ってくる答え実際に起きていることこちらの動き
「来期の予算が付けば」予算の話。現場では決められない予算が確定する時期だけ聞いて、そこまで待たない
「次のフェーズの体制が決まれば」役割の話。入れる余地があるかもしれない次フェーズで自分ができることを、こちらから1枚出す
「上と相談して」評価の話であることが多い深追いしない。並行して次を動かす

3つのどれであっても、答えが確定するのを待たないというのは共通です。私は一度、「たぶん延びます」を根拠に何も動かずに1か月を過ごし、終了2週間前に「今回は見送りに」と言われたことがあります。悪意はどこにもありませんでした。相手の中で本当に決まっていなかっただけです。

聞く相手も選びます。日々やりとりしている現場の担当者は、たいてい予算を持っていません。予算を持っている人に、一度だけ聞く。何度も聞くと、こちらの不安のほうが伝わります。

なお、この記事が扱っているのはまだ決まっていない段階の確認です。「今期で終わりです」と明確に告げられた場合は、聞くことも打てる手も変わるので更新されないと分かった月にやることのほうを見てください。

稼働中に動くと、単価が下がらない

ここが、残り1か月で動く最大の理由です。

同じ「空きます」でも、次の2つは相手にまったく違って見えます。

  • 「いま稼働中で、11月から週2〜3日ほど空く見込みです」
  • 「今月から空いています」

前者は、いま選ばれている人が持っている空き枠の話です。後者は、空いている人の話になります。中身は同じでも、相手の頭の中では別の情報として処理されます。

私の実感として、条件の交渉ができるのは前者のときだけでした。空いてから連絡すると、こちらに時間の余裕がないことが相手にも伝わります。すると、金額よりも「すぐ入れるかどうか」で話が進む。急いでいる側は、たいてい安いほうへ流されます。

だから、残り1か月のあいだに出す連絡は、売り込みではなく空く時期の共有にします。文面はこれで足ります。

ご無沙汰しています。いま入っている案件が10月末で一区切りになり、11月から週2〜3日ほど動ける見込みです。もし何か動いていることがあれば、時期だけでも教えてください。

売り込みの言葉が1つも入っていないことが大事です。相手に「断る」という作業をさせないので、返事が返ってきやすい。そして、この一行が3か月後に効くことがあります。

それでも埋まらなかったときに条件を緩める順番は、谷の月の記事に書いたとおりです。稼働日数、場所や時間帯、範囲の順に緩めて、単価は最後。一度下げた単価は、同じ相手には戻せません。値付けの型そのものは独立コンサルの単価の決め方に置いてあります。

引き継ぎの範囲を、終わる前に紙で決める

最後の1か月で、いちばん時間を持っていかれるのが引き継ぎです。そしてこれは、放っておくと契約が終わったあとの無償稼働になります。

私は独立して2年目に、終わった案件から3か月にわたって質問の連絡を受け続けたことがあります。断る理由もなく、毎回30分ずつ答えました。合計すると、その月の稼働1日ぶんくらいはあったと思います。悪気があったわけではなく、終わりの線をどちらも引いていなかっただけです。

引くのは簡単で、最終月のうちに一行決めるだけです。

  • 引き継ぎ資料は、何をどこまで作るか(どこかで線を引かないと無限に増えます)
  • 終了後の質問対応は、いつまで、どのくらい受けるか(「終了後2週間、メールで」など)
  • それを超える相談は、あらためて相談として受ける

3つ目まで言っておくのが大事です。断っているのではなく、次の入口を作っているからです。実際、この線を引いてから相談として戻ってきた案件があります。

効くこと、効かないこと

最後の1か月にやる行動を、効き目で分けておきます。

効くこと

  • 終了の前に、やったことを1枚にまとめて渡す。自分のためではなく、相手の社内で自分の名前が残るためです。人事異動があっても、その1枚は残ります
  • 終了後の連絡先を1本に決めて伝える(社内メールが切れると、そこで縁も切れます)
  • 一緒に働いた人に、個別に一言だけ送る。全員に同じ文面を送らない

効かないこと

  • 単価を下げて残ろうとすること。これは終了の理由が予算でも評価でも効きません。理由は更新されないと分かった月にやることに詳しく書きました
  • 全方位に「何か案件はありませんか」と送ること。返信率が落ちるだけでなく、次に本当に相談したいときの一通が軽くなります
  • 終わりの間際に、新しい提案を大量に出すこと。相手はもう次のことを考えています

残り4週間の割り方

順番だけ決めておけば、迷う時間がなくなります。

やること
第1週契約書の終期・更新条項・最終請求・入金日を確認して、入らない月の日付を確定させる
第2週「何が決まれば延長になるか」を、予算を持っている人に一度だけ聞く
第3週空く時期を、過去に一緒に仕事をした人に共有する(売り込みは書かない)
第4週引き継ぎ資料と、終了後の質問対応の線引き。最終稼働報告と請求

第3週を第4週に回さないでください。案件は、声をかけてから始まるまでに早くて3〜4週間、普通は2〜3か月かかります。最終週に動き始めると、その時点で谷は2か月ぶん確定します

まとめ

  • 谷は稼働が空く月ではなく、入金が入らない月に来る。逆算はその日付から始める
  • 最初にやるのは営業ではなく、終期・更新条項・最終請求・返却期日の確認4点
  • 延長は「ありますか」ではなく「何が決まれば延長になりますか」で聞く。答えを待たない
  • 稼働中に出す「空く時期の共有」は、空いてから出す連絡とは相手への見え方が違う。単価を守れるのは前者のときだけ
  • 引き継ぎは、期間と範囲を最終月のうちに一行で決める。決めないと無償稼働になる

終わりが決まっている案件は、悪い知らせではありません。いつ動けばいいかが、最初から分かっている案件です。分かっているのに動かないと、それが谷になる。ただそれだけの話です。

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